1回の大腸内視鏡スクリーニングは、13年にわたり大腸がんの罹患率を有意に抑制するが、死亡率には影響を及ぼさないことが、ポーランド・Maria Sklodowska-Curie National Research InstituteのMichal F. Kaminski氏らが実施した「NordICC試験」の長期追跡調査で示された。研究の成果は、Lancet誌2026年5月9日号で報告された。
欧州の約8.5万例のデータを解析
NordICC試験は、欧州4ヵ国(ノルウェー、ポーランド、スウェーデン、オランダ)で実施した住民ベースの無作為化対照比較試験(Norwegian Research Councilなどの助成を受けた)。
2009年6月~2014年6月に、各国レジストリから55~64歳の8万4,583例を抽出した(今回の解析にはオランダのデータは含まなかった)。
被験者を、大腸内視鏡によるスクリーニングを受ける群(2万8,217例)または受けない群(5万6,366例)に無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、大腸がん罹患率および死亡率とした。初回解析は10年後に行い(報告済み)、それ以降は2年以上の間隔を空けて解析を繰り返した。
13年大腸がん罹患率、スクリーニング群1.46%vs.非スクリーニング群1.80%
追跡期間中央値13年の時点で、大腸がんの発生は、ITT解析でスクリーニング群が2万8,217例中375例(1.46%)であり、非スクリーニング群の5万6,366例中912例(1.80%)と比べて有意に低かった(リスク比[RR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.71~0.90)。per-protocol解析でも、スクリーニング群で大腸がん罹患率が有意に低かった(1.00%vs.1.80%、RR:0.55、95%CI:0.33~0.81)。
近位大腸がんは、スクリーニング群で129例(0.51%)、非スクリーニング群で283例(0.56%)に発生し、両群間に差を認めなかった(RR:0.91、95%CI:0.71~1.09)。一方、遠位大腸がんは、非スクリーニング群で563例(1.11%)に発生したのに対し、スクリーニング群は224例(0.87%)と有意に頻度が低かった(RR:0.79、95%CI:0.65~0.89、交互作用のp<0.0001)。
また、男性では、大腸がんは非スクリーニング群の2万8,247例中541例(2.19%)に発生したのに比べ、スクリーニング群は1万4,154例中214例(1.69%)と有意に低かった(RR:0.77、95%CI:0.64~0.88)。一方、女性では、スクリーニング群の1万4,063例中161例(1.24%)、非スクリーニング群の2万8,119例中371例(1.43%)に発生し、両群間に差はみられなかった(RR:0.87、95%CI:0.70~1.02、交互作用のp<0.0001)。
非スクリーニング群の死亡率は予想より大幅に低い
13年の時点における大腸がんによる死亡は、ITT解析でスクリーニング群2万8,217例中106例(0.41%)、非スクリーニング群5万6,366例中236例(0.47%)に認めた(RR:0.88、95%CI:0.68~1.08)。また、per-protocol解析ではそれぞれ0.33%および0.47%(RR:0.70、95%CI:0.26~1.25)であった。いずれの解析でも両群間に差はなかった。
なお、非スクリーニング群で観察された大腸がん死亡率(0.47%)は、試験デザイン作成時に予想されていた値(0.82%)に比べ大幅に低かった。
著者は、「これらの知見に基づくと、1回の大腸内視鏡検査により、13年間の追跡期間中に大腸がんのリスクが0.3~0.8%低下する」「非スクリーニング群の大腸がん死亡率がきわめて低かったため、さらに追跡期間を延長してもこれ以上のスクリーニングによる有益性は望めないかもしれない」としている。
また、「死亡リスクを低減せずとも、がんの発症を防ぐことができるのであれば、スクリーニングは正当化される可能性がある」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)