75歳以上の高齢者において、75歳前に大腸内視鏡検査で腺腫が認められた人は腺腫が認められなかった人と比べ、その後10年間の大腸がん発症および大腸がん死の発生率は高かったものの、その累積リスクは大腸がん以外の要因による死亡リスクよりはるかに低かった。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のSamir Gupta氏らが、同国の退役軍人を対象とした後ろ向きコホート研究の結果で報告した。これまで、腺腫が認められた高齢者の大腸がんのリスクは不明であった。著者は、「高齢者では、他の健康上の懸念事項を優先し、経過観察のための大腸内視鏡検査の優先順位を下げることを検討してよいだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年4月9日号掲載の報告。
65~74歳の大腸内視鏡検査の腺腫有無で、75歳以降の大腸がん発症や死亡リスクを比較
研究グループは、2006年1月1日~2019年12月31日に米国退役軍人省において大腸内視鏡検査を受けた退役軍人を対象に、電子カルテを用いて後ろ向きコホート研究を行った。
解析対象は、65~74歳で大腸内視鏡検査を受けたことのある75歳以上の高齢者であった。追跡調査は、対象者の75歳の誕生日から開始し、大腸がんの新規発症、死亡または2019年12月31日のいずれか早い時点まで継続した。75歳になる前に大腸がんまたは炎症性腸疾患と診断された人、腺腫を伴わない鋸歯状病変の既往者などは除外した。
主要アウトカムは、大腸がん発症、大腸がん死、非大腸がん死、全死因死亡の推定累積発生率で、75歳になる前の直近の大腸内視鏡検査において1つ以上の腺腫が認められた高齢者と認められなかった高齢者で比較した。
大腸がん発症および大腸がん死の発生率の比較にはGray検定を用いた。また、腺腫が認められた高齢者における大腸がんおよび非大腸がん死の発生率は、全死因死亡リスクが増加する5つの退役軍人省フレイル指数カテゴリー(非フレイル0.10以下、プレフレイル0.11~0.20、軽度フレイル0.21~0.30、中等度フレイル0.31~0.40、重度フレイル0.40超)に基づいて層別化した。
腺腫ありの大腸がん死累積発生率0.5%、非大腸がん死は約47~48%
解析対象は計9万1,952例(75歳到達前の直近の大腸内視鏡検査時の年齢中央値71歳[四分位範囲[IQR]:69~73]、男性98%)で、このうち腺腫ありが2万5,538例(27.8%)、腺腫なしが6万6,414例(72.2%)であった。
10年間の推定累積発生率は、大腸がん発症については腺腫あり集団1.1%(95%信頼区間[CI]:0.8~1.3)、腺腫なし集団0.7%(95%CI:0.5~0.8)であり(Gray検定のp<0.001)、大腸がん死についてはそれぞれ0.5%(95%CI:0.3~0.7)、0.4%(95%CI:0.3~0.5)であった(Gray検定のp=0.005)。一方、非大腸がん死はそれぞれの集団で48.2~48.4%、46.9~47.0%であり、大腸がん発症率より非大腸がん死の累積発生率が大幅に上回っていた。
また、フレイルのすべてのカテゴリーにおいて、10年時点の腺腫あり集団の大腸がん累積発症率は低く(非フレイル1.7%、他のすべてのカテゴリー1%未満)、非大腸がん死の累積発生率(非フレイル34.2%~重度フレイル82.0%)が大腸がん発症率を大きく上回っていた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)