英国・ブリストル大学のRosie A. Harris氏らは、早期非小細胞がん(NSCLC)患者の治療において、ビデオ補助胸腔鏡手術(VATS)による肺葉切除術は開胸手術と比較して、無病生存(DFS)を損なわずに全生存(OS)を改善するとのエビデンスをメタ解析の結果で示した。VATSは、現在、早期肺がんにおける肺葉切除術の最も一般的な術式であるが、生存率の検証において十分な検出力を持つ単一の試験が存在せず、開胸手術との腫瘍学的同等性は依然として仮説の域を出ないとされている。Lancet誌2026年3月21日号掲載の報告。
2000年以降の無作為化試験のメタ解析
研究グループは、早期肺がんの肺葉切除術におけるVATSと開胸手術の有用性を比較する目的で、無作為化試験の個別患者データを用いたメタ解析を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]の助成を受けた)。
医学関連データベースで、2000年1月1日~2025年6月13日に発表された論文を検索した。年齢18歳以上の早期NSCLC患者においてVATSと開胸手術を比較し、死亡および再発のデータを収集した無作為化対照比較試験を解析の対象とした。
主要評価項目はOS率、副次アウトカムはDFS率とした。
3件の試験の1,185例の個別患者データを解析
3件の論文(Bendixenらによるデンマークの研究[PLEACE試験]、Longらによる中国の研究、Limらによる英国の研究[VIOLET試験])を解析に含めた。参加者は合計1,185例で、VATS群が586例(年齢中央値64.0歳、女性50%)、開胸手術群が599例(64.8歳、49%)だった。
各研究の追跡期間中央値は、Bendixenらの試験が9.5年、Longらの試験が5.2年、Limらの試験が3.8年であった。対象とした肺の原発巣の臨床病期は、Bendixenらの試験がStage1であったのに対し、Longらの試験とLimらの試験はStage1および2だった。
治療群別の完全切除(R0)の達成率は、VATS群が98%、開胸手術群も98%であった。術後補助療法の施行率はそれぞれ30%および29%だった。
VATS優先の重要性を示す知見
OS率の統合ハザード比(HR)は0.79(95%信頼区間[CI]:0.65~0.96)であり、開胸手術群に比べVATS群で有意に良好であった。一方、DFS率の統合HRは0.91(95%CI:0.75~1.12)と、両群間に有意な差はみられなかった。OS率、DFS率とも、統計学的な異質性は認めなかった。
著者は、「VATSによる肺葉切除術が広く普及している背景には、術後の疼痛軽減、合併症の減少、入院期間の短縮、より迅速な身体機能の回復、術後の生活の質の向上などの既知の非腫瘍学的利点があるが、本研究の結果は、これに長期的な全生存率の優位性を加えた」「これらの知見は、早期NSCLCの外科的切除術の術式の選択では、技術的に実行可能であれば、VATSを優先することの重要性を強く主張するものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)