1型糖尿病患者における慢性腎臓病(CKD)の治療では、30年以上前の研究に基づき、生活習慣、血糖値、血圧の最適化に重点が置かれ、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬が推奨されてきたが、これらの介入はCKDの進行を抑制する効果はあるものの、完全に阻止することはできないとされる。オーストラリア・University of New South WalesのHiddo J.L. Heerspink氏らは「FINE-ONE試験」において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンはプラセボと比較して、有効性と安全性の代替指標としての尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を有意に低下させ、高カリウム血症が多くみられるものの重篤な有害事象の頻度に大きな差はないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2026年3月5日号で報告された。
9ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験
FINE-ONE試験は、9ヵ国で実施した国際的な二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(Bayerの助成を受けた)。2024年2月~2025年2月に参加者を登録した。
対象は、18歳以上、1型糖尿病と診断され、CKD(推算糸球体濾過量[eGFR]:25~<90mL/分/1.73m
2)およびアルブミン尿(UACR[アルブミンはmg、クレアチニンはgで測定]200~<5,000)を有し、ACE阻害薬またはARBの投与を受けている患者であった。
被験者を、フィネレノンまたはプラセボを経口投与する群に無作為に割り付けた。フィネレノンの用量は、スクリーニング時eGFR≧60mL/分/1.73m
2の患者は20mg/日、同25~<60mL/分/1.73m
2の患者は10mg/日で開始した。
主要アウトカムは、6ヵ月の時点におけるベースラインからのUACRの相対的な変化量とした。
UACRの減少率が25%高い
242例を登録し、フィネレノン群に120例(平均[±SD]年齢51.3[±14.2]歳、女性34.2%)、プラセボ群に122例(51.9[±13.2]歳、35.2%)を割り付けた。
UACR中央値は、フィネレノン群でベースラインの574.6から6ヵ月時に373.5へ低下し、プラセボ群では506.4から475.6へ低下した。
この6ヵ月間で、UACRは、フィネレノン群で34%の減少(ベースラインとの最小二乗幾何平均比:0.66、95%信頼区間[CI]:0.60~0.73)、プラセボ群で12%の減少(0.88、0.79~0.98)であった。これは、プラセボ群に比べフィネレノン群で25%高い減少率を示したことになり、有意に優れた(6ヵ月時のプラセボ群との最小二乗幾何平均比:0.75、95%CI:0.65~0.87、p<0.001)。
血圧、HbA1c値、体重の変化に差はない
最も頻度の高い有害事象は高カリウム血症であった(フィネレノン群12例[10.1%]、プラセボ群4例[3.3%])。高カリウム血症のためフィネレノンの投与を中止した患者は2例(1.7%)だった。また、重篤な有害事象の頻度は両群で同程度であった(14例[11.8%]、14例[11.5%])。
6ヵ月時のeGFRの変化量は、フィネレノン群で-5.6mL/分/1.73m
2、プラセボ群で-2.7mL/分/1.73m
2であった(群間差:-2.9mL/分/1.73m
2、95%CI:-5.1~-0.7)。6ヵ月以降のウォッシュアウト期間中に、フィネレノン群のeGFR値はベースラインの値に近づいた。
6ヵ月の時点で、収縮期血圧のベースラインからの変化量の両群間の差は-0.9mmHg(95%CI:-4.3~2.6)、拡張期血圧の変化量の差は-1.3mmHg(-3.4~0.9)であり、いずれもフィネレノン群のほうが変化量は大きかったが、有意な差はなかった。また、両群とも、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値や体重に有意な変化を認めず、群間差は小さかった。
高リスクのサブグループでも有効な可能性
著者は、「ガイドラインに基づく薬物療法(ACE阻害薬、ARBなど)に加えフィネレノンを投与すると、プラセボに比べより大きなUACRの低下が得られ、この効果は、ベースラインのeGFRが最も低い(<45mL/分/1.73m
2)集団(最小二乗幾何平均比:0.74、95%CI:0.57~0.97)およびUACRが最も高い(>1,000)集団(0.91、0.70~1.18)といった腎および心血管の有害なアウトカムのリスクがきわめて高いサブグループにおいても同様であった」としている。
なお、著者は考察で「本試験は地理的に多様なCKD合併1型糖尿病患者を対象としたものの、被験者の約3分の2が男性であったことから、これらの知見は試験コホートと同様の特徴を共有する患者にのみ適用可能であり、一般化はできない」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)