胃腸炎に伴う嘔吐を呈する小児において、救急外来受診後のオンダンセトロン投与はプラセボ投与と比べて、その後7日間の中等症~重症の胃腸炎リスクの低下に結び付いたことが示された。カナダ・カルガリー大学のStephen B. Freedman氏らPediatric Emergency Research Canada Innovative Clinical Trials Study Groupが、二重盲検無作為化優越性試験の結果を報告した。オンダンセトロンは、救急外来を受診した急性胃腸炎に伴う嘔吐を呈する小児への単回投与により、アウトカムを改善することが報告されている。症状緩和のために帰宅時に処方されることも多いが、この治療を裏付けるエビデンスは限られていた。NEJM誌2025年7月17日号掲載の報告。
嘔吐への対応として6回投与分を処方、中等症~重症の胃腸炎発生を評価
研究グループは、カナダの3次医療を担う6施設の小児救急外来で、急性胃腸炎に伴う嘔吐を呈する生後6ヵ月~18歳未満を対象に試験を行った。
救急外来からの帰宅時に、被験者には経口オンダンセトロン液剤(濃度4mg/5mL)またはプラセボ液剤が6回分(それぞれ0.15mg/kg、最大投与量8mg)提供された。介護者には0.1mL単位で調整された投与量が伝えられ、投与後15分以内に嘔吐が再発した場合は再投与し、試験登録後48時間で液剤は廃棄するよう指示された。介護者は7日間の試験期間中、液剤投与および関連した症状を日誌に記録した。
主要アウトカムは、中等症~重症の胃腸炎(試験登録後7日間における修正Vesikariスケール[スコア範囲:0~20、高スコアほどより重症であることを示す]のスコア9以上の胃腸炎発生で定義)。副次アウトカムは、嘔吐の発現、嘔吐の持続期間(試験登録から最終嘔吐エピソードまでの期間で定義)、試験登録後48時間の嘔吐エピソード回数、試験登録後7日間の予定外受診、静脈内輸液の投与などであった。
中等症~重症の胃腸炎はオンダンセトロン群5.1%、プラセボ群12.5%、有害事象発現は同程度
2019年9月14日~2024年6月27日に合計1,030例の小児が無作為化された。解析対象1,029例(1例はWebサイトエラーのため無作為化できなかった)は、年齢中央値47.5ヵ月、女児521例(50.6%)、体重中央値16.1kg(四分位範囲[IQR]:12.2~22.5)、ロタウイルスワクチン接種済み562/782例(71.9%)、ベースラインでの嘔吐の持続期間13.9時間(IQR:8.9~25.7)、修正Vesikariスケールスコア中央値9(IQR:7~10)などであった。
主要アウトカムの中等症~重症の胃腸炎は、オンダンセトロン群5.1%(データが入手できた452例中23例)、プラセボ群12.5%(同441例中55例)であった(補正前リスク差:-7.4%ポイント、95%信頼区間[CI]:-11.2~-3.7)。試験地、体重、欠失データを補正後も、オンダンセトロン群はプラセボ群と比べて中等症~重症の胃腸炎のリスクが低かった(補正後オッズ比:0.50、95%CI:0.40~0.60)。
嘔吐の発現や持続期間中央値について、あらゆる意味のある群間差は認められなかったが、試験登録後48時間の嘔吐エピソード回数は、オンダンセトロン群がプラセボ群と比べて低減した(補正後率比:0.76、95%CI:0.67~0.87)。予定外受診および試験登録後静脈内輸液の投与は、試験群間で大きな差はなかった。
有害事象の発現も試験群間で意味のある差は認められなかった(オッズ比:0.99、95%CI:0.61~1.61)。
(ケアネット)