マラソン中の心停止、発生は横ばいだが突然死は大幅に減少/JAMA

米国では2010~23年に2,900万人以上がマラソンおよびハーフマラソンを完走しており、これは2000~09年の約3倍に相当するという。米国・エモリー大学のJonathan H. Kim氏らは、近年の長距離ランニングレースイベントにおける心停止の発生率と転帰を調べ、米国の長距離ランニングレースへの参加者は増加したが、心停止の発生率は一定していることを明らかにした。心停止による死亡率は大きく減少しており、十分な発生関連データがあった症例では、原因として冠動脈疾患(CAD)が最も多くみられたという。JAMA誌オンライン版2025年3月30日号掲載の報告。
米国2010~23年のマラソンおよびハーフマラソンでの心停止の発生と転帰を調査
研究グループは、米国で行われた2010~23年のマラソンおよびハーフマラソンにおける心停止の発生と転帰を明らかにするため、レース完走者の記録およびメディア記事、レース主催者への直接的なコンタクト、全米陸上競技連盟(USA Track & Field)のインシデントレポートおよび生存者または近親者へのインタビューによる包括的なケースレビュー(観察的ケースシリーズ)を行った。2010年1月1日~2023年12月31日の米国のマラソンおよびハーフマラソンのコホートデータをRace Associated Cardiac Event Registryから得て、ケースプロファイル・レビューを行い、原因および生存に関連した因子を調べ、発生および原因のデータを参照基準とした過去のデータ(2000~09年)と比較した。
主要アウトカムは、心停止発生率および死亡率とした。
速やかな除細動器へのアクセスが生存率を向上か
米国の2010~23年の長距離ランニングレースのレース完走者2,931万1,597人(男性44.5%、マラソン完走者23.2%、ハーフマラソン完走者76.8%)において、心停止の発生は176件(男性127人、女性19人、性別不明30人)であった。心停止発生率は0.60件/10万人(95%信頼区間[CI]:0.52~0.70)であり、2000~09年(0.54件/10万人[95%CI:0.41~0.70])と比較して変化は認められなかった。一方で、突然死の発生率(2010~23年0.20件/10万人[95%CI:0.15~0.26]vs.2000~09年0.39件/10万人[0.28~0.52])および致死的ケースの発生率(34%vs.71%)は、大幅な低下がみられた。
心停止は、男性(1.12件/10万人[95%CI:0.95~1.32])のほうが女性(0.19件/10万人[0.13~0.27])よりも多く、またマラソン参加中(1.04件/10万人[0.82~1.32])のほうがハーフマラソン参加中(0.47件/10万人[0.38~0.57])よりも発生が多かった。
心停止の原因が明確に特定できたランナーでは、肥大型心筋症よりもCADが最も多い原因であった。心肺蘇生時間の短縮と初期の心室頻脈性不整脈が生存と関連していた。
結果を踏まえて著者は、「効果的な緊急アクション計画による、速やかな除細動器へのアクセスが、生存率を改善していると思われる」としている。
(ケアネット)
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