死亡リスクの高いPAH患者に対するsotaterceptの有効性/NEJM

最大耐量の基礎療法を受けている死亡リスクの高い肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者において、sotaterceptの上乗せはプラセボと比較し、全死因死亡、肺移植またはPAH悪化による24時間以上の入院の複合リスクを低下させることが、フランス・パリ・サクレー大学のMarc Humbert氏らによる第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ZENITH試験」の結果で示された。sotaterceptは、世界保健機関(WHO)機能分類クラスIIまたはIIIのPAH患者の運動耐容能を改善し、臨床的悪化までの時間を遅らせるが、進行したPAHで死亡リスクの高い患者に対するsotaterceptの追加投与の有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2025年3月31日号掲載の報告。
基礎療法へのsotatercept追加投与の有効性をプラセボと比較検証
研究グループは、安定した最大耐量のPAH基礎療法を受けているWHO機能分類IIIまたはIVのPAH成人患者で、REVEAL Lite 2リスクスコアが9以上、無作為化前6週間以内の肺血管抵抗が5 Wood単位(400 dyne・秒・cm-5)以上、肺動脈楔入圧または左室拡張末期圧が15mmHg以下の患者を、sotatercept群(3週間ごとに皮下投与、開始用量0.3mg/kg、0.7mg/kgまで増量)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ基礎療法に加えて投与した。主要エンドポイントは、全死因死亡、肺移植またはPAH悪化による24時間以上の入院の複合とし、time-to-first-event解析で評価した。
sotatercept追加で、複合リスクが有意に低下
2021年12月1日に登録が開始された。255例がスクリーニングを受け、172例がITT集団に組み入れられた(sotatercept群86例、プラセボ群86例)。本試験は、事前に規定された中間解析(データカットオフ日2024年7月26日)の有効性結果に基づき、早期に中止となった。主要エンドポイントのイベントは、sotatercept群で15例(17.4%)、プラセボ群で47例(54.7%)に発生し、ハザード比は0.24(95%信頼区間:0.13~0.43、p<0.001)であった。
全死因死亡はsotatercept群7例(8.1%)、プラセボ群13例(15.1%)、肺移植はそれぞれ1例(1.2%)、6例(7.0%)、PAH悪化による入院8例(9.3%)、43例(50.0%)であった。
sotatercept群の主な有害事象は、鼻出血と毛細血管拡張症であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
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死亡リスクの高いPAH患者に対するアクチビンシグナル伝達阻害剤sotatercept上乗せの有効性が証明された(解説:原田和昌氏)
コメンテーター : 原田 和昌( はらだ かずまさ ) 氏
東京都健康長寿医療センター 副院長
J-CLEAR理事