RSウイルスの疾病負担、早産児で長期的に増大/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2024/03/06

 

 早産児は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)関連疾患の負担が過度に大きく、乳幼児のRSVによる入院の25%が早産児であり、とくに早期早産児で入院のリスクが高く、この状態は生後2年目までは続くことが、中国・南京医科大学のXin Wang氏らRespiratory Virus Global Epidemiology Networkが実施したRESCEU研究で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年2月14日号に掲載された。

2歳未満の早産児の疾患負担をメタ解析で評価

 研究グループは、在胎週数37週未満で出生した乳幼児におけるRSV関連の重症急性下気道感染症(ALRI)の世界的な疾病負担とリスク因子の評価を目的に、系統的レビューとメタ解析を行った(EU Innovative Medicines Initiative Respiratory Syncytial Virus Consortium in Europeの助成を受けた)。

 1995年1月1日~2021年12月31日に発表された研究の集計データと、Respiratory Virus Global Epidemiology Networkが共有する呼吸器感染症に関する個々の患者データを用いて、早産で出生した2歳未満の乳幼児の地域におけるRSV関連ALRIの発生率、入院率、院内死亡率、および全死亡率を推定した。在胎週数32週未満を早期早産、32~<37週を後期早産とした。

2019年のALRI 165万件、入院53万3,000件

 47件の論文と、共同研究者の提供による個々の患者データを含む17件の研究を解析の対象とした。

 2019年には、世界の早産児において、生後0~<12ヵ月にRSV関連ALRIエピソードが165万件(95%不確実性範囲[UR]:135万~199万)発生したと推定され、このうち154万件(93%)が開発途上国であった。

 同様に、RSV関連入院は53万3,000件(95%UR:38万5,000~73万)で、このうち49万3,000件(92%)が開発途上国、RSV関連院内死亡は3,050件(95%UR:1,080~8,620)で、2,700件(88.5%)が開発途上国で発生した。また、RSVに起因する死亡が早産児で2万6,760件(95%UR:1万1,190~4万6,240)発生しており、これは全乳幼児のRSV死の40%(17~65)に相当した。

早期早産児でALRIの発生率と入院率が高い

 早期早産児では、RSV関連ALRIの発生率と入院率が、すべての在胎週数で出生した乳幼児と比較して有意に高かった(年齢別、アウトカム別の率比[RR]の範囲は1.69~3.87)。また、生後2年目(12~<24ヵ月)には、早期早産児は全乳幼児と比較して、RSV関連ALRIの発生率は同程度であったが、入院率は有意に高かった(RR:2.26、95%UR:1.27~3.98)。

 後期早産児におけるRSV関連ALRIの発生率は、1歳未満の全乳幼児と同程度であったが、生後6ヵ月までのRSV関連ALRIによる入院率は後期早産児で高かった(RR:1.93、95%UR:1.11~3.26)。

院内死亡率は同程度

 全体として、すべての在胎週数の乳幼児におけるRSV関連ALRIによる入院の25%(95%UR:16~37)を早産児が占めた。早産児におけるRSV関連ALRIによる院内死亡率は全乳幼児と同程度であった。

 RSV関連ALRIの発生との関連を認めた因子は、主に周産期および社会人口統計学的な特性(母親の妊娠中の喫煙、5歳未満の子供が2人以上いる家庭、多胎児)であった(オッズ比[OR]の範囲は1.68~1.80)。また、入院を要する感染による重篤なアウトカムとの関連を認めた因子は、主に先天性心疾患、気管切開、気管支肺異形成症、慢性肺疾患、ダウン症候群などの基礎疾患だった(ORの範囲は1.40~4.23)。

 著者は、「これらの知見は、早産児および乳幼児におけるRSVの予防と臨床管理の戦略を最適化するための重要なエビデンスとなる」としている。

(医学ライター 菅野 守)