中等~重症心不全の血行動態モニタリング、QOL改善・入院減/Lancet

遠隔血行動態モニタリングは、現行のガイドラインに準拠した治療を受けた中等度~重度の心不全患者において、QOLの実質的な改善をもたらし、心不全による入院を減少させることが、オランダ・エラスムスMC大学医療センターのJasper J. Brugts氏らが実施した「MONITOR-HF試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年5月20日号で報告された。
オランダ25施設の無作為化試験
MONITOR-HF試験は、オランダの25の施設が参加した非盲検無作為化試験であり、2019年4月~2022年1月の期間に患者の登録が行われた(オランダ保健省などの助成を受けた)。駆出率を問わず、NYHA心機能分類クラスIIIの慢性心不全で、心不全による入院歴がある患者が、標準治療に加え血行動態モニタリング(CardioMEMS-HFシステム、Abbott Laboratories)を行う群、または標準治療のみを受ける群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。
主要エンドポイントは、intention-to-treat(ITT)集団におけるベースラインから12ヵ月の時点までのカンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)総合サマリースコアの平均変化量の群間差であった。
348例が登録され、CardioMEMS-HF群に176例、対照群に172例が割り付けられた。ベースラインの全体の年齢中央値は69歳(四分位範囲[IQR]:61~75)、駆出率中央値は30%(IQR:23~40)であった。KCCQ総合サマリースコアは、CardioMEMS-HF群が55.8(SD 23.3)点、対照群は54.9(22.3)点であった。平均フォローアップ期間は1.8(SD 0.9)年だった。
安全性も良好
12ヵ月時のKCCQ総合サマリースコアの平均変化量は、CardioMEMS-HF群が+7.05点(95%信頼区間[CI]:2.77~11.33、p=0.0014)、対照群は-0.08点(95%CI:-3.76~3.60、p=0.97)であり、両群の変化量の差は7.13点(95%CI:1.51~12.75、p=0.013)と、CardioMEMS-HF群で有意に良好であった。レスポンダー解析では、KCCQ総合サマリースコアが5点以上改善した患者の割合は、対照群が38.1%であったのに対し、CardioMEMS-HF群は47.7%(オッズ比[OR]:1.69、95%CI:1.01~2.83、p=0.046)と有意に良好で、KCCQ総合サマリースコアが5点以上悪化した患者の割合も、対照群の39.5%と比較して、CardioMEMS-HF群は24.2%(OR:0.45、95%CI:0.26~0.77、p=0.0035)と有意に優れた。
また、心不全による入院のイベント発生率は、対照群の0.678/人年に比べ、CardioMEMS-HF群は0.381/人年であり有意に低かった(ハザード比[HR]:0.56、95%CI:0.38~0.84、p=0.0053)。
CardioMEMS-HF群では、安全性の指標であるデバイスまたはシステム関連の合併症(DSRC)の発生は2.3%(4/172例)であり(無DSRC率97.7%)、センサーの故障は1.2%(2/168例)であった(無センサー故障率98.8%)。
著者は、「これらの知見は、血行動態モニタリングの技術に関するエビデンスの集約に寄与し、ガイドラインの推奨や遠隔肺動脈圧モニタリングの推進に影響を及ぼす可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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遠隔血行動態モニタリングシステムは心不全患者のEFに関係なく入院を減少させ、QOLを改善する(解説:原田和昌氏)
コメンテーター : 原田 和昌( はらだ かずまさ ) 氏
東京都健康長寿医療センター 副院長
J-CLEAR理事