adagrasib、既治療のKRAS G12C変異陽性大腸がんに有望/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/01/11

 

 治療歴のある転移を有するKRAS G12C変異陽性の大腸がん患者の治療において、経口KRAS G12C阻害薬adagrasibは、単剤療法およびセツキシマブ(抗EGFR抗体)との併用療法のいずれにおいても、抗腫瘍活性が認められ、併用療法では奏効期間が6ヵ月を超えることが、米国・Sloan Kettering記念がんセンターのRona Yaeger氏らが実施した「KRYSTAL-1試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年1月5日号に掲載された。

米国の非無作為化第I/II相試験

 KRYSTAL-1試験は、米国で進行中の非盲検非無作為化第I/II相試験であり、今回はadagrasib単剤療法の第II相試験と、セツキシマブとの併用療法の第Ib相試験の結果が報告された(Mirati Therapeuticsの助成を受けた)。

 対象は、年齢18歳以上、転移を有する切除不能の大腸がんで、KRAS G12C変異が陽性であり、治癒が期待できる治療や標準治療がなく、全身状態の指標であるECOG PSスコアが0または1の患者であった。

 被験者は、adagrasib単剤療法の第II相試験では、同薬600mgを1日2回経口投与され、併用療法の第Ib相試験では、adagrasib(600mg、1日2回、経口)+セツキシマブ(初回負荷投与量400mg/m2体表面積、以降は250mg/m2を週1回静脈内投与、または500mg/m2を2週ごと)の投与を受けた。

 主要評価項目は、単剤療法が担当医判定による客観的奏効(完全奏効、部分奏効)、併用療法は安全性(用量制限毒性を含む)とされた。

併用療法は奏効率46%、奏効期間7.6ヵ月

 データカットオフ日(2022年6月16日)の時点で、単剤療法群に44例(年齢中央値59歳[範囲:29~79]、女性50%、治療期間中央値5.9ヵ月、全身療法による前治療ライン数中央値3)、併用療法群に32例(60歳[41~74]、53%、7.3ヵ月、3)が登録され、追跡期間中央値はそれぞれ20.1ヵ月および17.5ヵ月であった。

 単剤療法群(43例が評価可能)の客観的奏効率は19%(95%信頼区間[CI]:8~33)であり、盲検下の独立中央判定では23%(同:12~39)、最大の解析対象集団(FAS)(44例)における担当医判定では18%(同:8~33)であった。

 また、単剤療法群の奏効期間中央値は4.3ヵ月(95%CI:2.3~8.3)、無増悪生存期間(PFS)中央値は5.6ヵ月(同:4.1~8.3)、全生存期間(OS)中央値は19.8ヵ月(同:12.5~23.0)であった。

 併用療法群(28例が評価可能)では、盲検下独立中央判定および担当医判定による客観的奏効率が46%(95%CI:28~66)、奏効期間中央値が7.6ヵ月(同:5.7~評価不能)、PFS中央値が6.9ヵ月(同:5.4~8.1)、OS中央値は13.4ヵ月(同:9.5~20.1)であった。

 治療関連有害事象は、単剤療法群が93%、併用療法群は100%で発現し、このうちGrade3/4はそれぞれ34%および16%であった。頻度の高い有害事象は、単剤療法群が下痢(66%)、悪心(57%)、嘔吐(45%)、疲労(45%)であり、併用療法群は悪心(62%)、下痢(56%)、嘔吐(53%)、ざ瘡様皮膚炎(47%)、疲労(47%)であった。

 有害事象による減量は、単剤療法群が39%、併用療法群はadagrasibが31%、セツキシマブが3%で認められた。また、有害事象による投与中止は、単剤療法群が0%、併用療法群はadagrasibが0%、セツキシマブが16%でみられた。Grade5の有害事象は、両群とも観察されなかった。

 著者は、「これらの結果は、KRASEGFRの双方の阻害が大腸がんに対する活性を有することを示しており、前臨床研究の知見と一致する。2つの薬剤の併用は相乗的な毒性作用をもたらさず、治療関連有害事象は各薬剤の単剤療法の報告と一致した」としている。

(医学ライター 菅野 守)