サル痘、発症前の症例から感染の可能性も/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2022/11/18

 

 英国健康安全保障庁(UKHSA)のThomas Ward氏らは、英国でのサル痘の感染動態を調べる目的で接触追跡研究を実施した。英国では、サル痘の流行は2022年7月9日時点でピークとなりその後に低下。発症間隔は潜伏期間より短い場合が一般的であったことから、症状発現前のサル痘症例からの感染伝播があったことが示唆されたとしている。また、症状発現前に感染が検出されたのは最大4日間であったことから、感染の可能性がある人々の95%を検出するためには16~23日の隔離期間が必要と考えられたこと、発症間隔の95パーセンタイル値は23~41日間であり、感染期間が長いことが示唆されたとしている。BMJ誌2022年11月2日号掲載の報告。

サル痘症例2,746例の接触追跡を行い、潜伏期間と発症間隔を推定

 研究グループは、UKHSAの症例質問票からデータを収集し、サル痘症例の接触追跡研究を実施した。対象は、2022年5月6日~8月1日の期間にPCR検査でサル痘と確定診断された症例2,746例で、接触追跡により症例と接触者のペアを特定した。

 主要評価項目は、サル痘感染症の潜伏期間と発症間隔(1次感染者の症状発現日と2次接触者の症状発現日の間隔)で、2つのベイジアンモデル(区間打ち切り補正[ICC]、区間打ち切り右側切り捨て補正[ICRTC])を用いて推定した。また、サル痘ウイルス感染が確認されUKHSAに報告された日ごとの症例数の増加率について、一般化加法モデルを用いて推定した。

発症間隔中央値は潜伏期間より短く、発症前の症例から感染伝播する可能性あり

 2,746例の平均年齢は37.8歳で、95%がゲイ・バイセクシャル・男性間性交渉者であると報告した(1,160/1,213例)。

 平均潜伏期間はICCモデルで7.6日(95%信用区間[CrI]:6.5~9.9)、ICRTCモデルで7.8日(6.6~9.2)、平均発症間隔はそれぞれ8.0日(95%CrI:6.5~9.8)、9.5日(7.4~12.3)と推定された。

 両モデルとも平均発症間隔は潜伏期間より長かったが、短期発症間隔の頻度が短期潜伏期間よりも多く認められ、発症間隔の25パーセンタイル値および中央値は潜伏期間の同値より短かった。ICCとICRTCモデルにおいて、25パーセンタイル値は推定1.8日(95%CrI:1.5~1.8)~1.6日(1.4~1.6)短く、中央値は推定1.6日(1.5~1.7)~0.8日(0.3~1.2)短かった。

 発症間隔と潜伏期間の連携データのある症例13例のうち、10例で発症前の感染が記録されていた。

 症例の倍加時間は、英国で最初のサル痘症例が報告された5月6日には9.07日(95%信頼区間[CI]:12.63~7.08)と推定されたが、症例の増加率は7月9日までのアウトブレイク中に減衰し、その後は症例の半減期へと転じ、試験終了時の8月1日には半減期が29日(38.02~23.44)にまで減少していた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)