メポリズマブ、好酸球性喘息の小児患者で増悪を低減/Lancet

都市部の低所得地域に居住する増悪を起こしやすい好酸球性喘息の小児患者において、インターロイキン-5(IL-5)に対するヒト化モノクローナル抗体であるメポリズマブによる表現型指向の治療法は、以前に成人で観察された有効性に比べれば劣るものの、プラセボとの比較で喘息増悪の回数の有意な減少をもたらすことが、米国・ウィスコンシン大学医学公衆衛生大学院のDaniel J. Jackson氏ら国立アレルギー・感染病研究所(NIAID)Inner City Asthma Consortiumが実施した「MUPPITS-2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年8月13日号に掲載された。
米国の都市部9施設の無作為化プラセボ対照比較試験
MUPPITS-2試験は、増悪を起こしやすい好酸球性喘息の小児患者の治療における、ガイドラインに基づく治療へのメポリズマブの上乗せ効果の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、米国の都市部9ヵ所の医療センターが参加し、2017年11月~2020年3月の期間に患者の登録が行われた(米国NIAIDとGlaxoSmithKlineの助成を受けた)。対象は、年齢6~17歳、社会経済的に恵まれない地域に住み、増悪を起こしやすい喘息(前年に2回以上の増悪と定義)を有し、血中好酸球数≧150個/μLの患者であった。
被験者は、ガイドラインに基づく治療に加え、メポリズマブ(6~11歳:40mg、12~17歳:100mg)またはプラセボを4週ごとに皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、52週の投薬が行われた。患者、担当医、アウトカムの測定値を収集する研究者は、割り付け情報を知らされなかった。
主要アウトカムは、intention-to-treat集団における、52週の投与期間に全身コルチコステロイドによる治療を受けた重度の喘息増悪の数(増悪率/人年)とされた。また、鼻洗浄検体を用いたトランスクリプトミクスによるモジュール解析により、治療効果のメカニズムの評価が行われた。
高リスク小児で増悪を回避するための新たな標的を確認
9都市(ボストン、シカゴ、シンシナティ、ダラス、デンバー、デトロイト、ニューヨーク、セントルイス、ワシントンDC)から290例(intention-to-treat集団)が登録され、メポリズマブ群に146例、プラセボ群に144例が割り付けられた。248例が試験を完遂した。全体の年齢中央値は10.0歳(IQR:9.0~13.0)、女性が43%で、人種は黒人/アフリカ系米国人が70%、白人が11%、民族はヒスパニック/ラテン系が25%であった。52週の試験期間中に発生した喘息増悪の平均回数(増悪率/人年)は、メポリズマブ群が0.96(95%信頼区間[CI]:0.78~1.17)と、プラセボ群の1.30(1.08~1.57)に比べ有意に少なかった(率比:0.73、95%CI:0.56~0.96、p=0.027)。
喘息の初回増悪までの期間は、両群間に差はみられなかった(ハザード比:0.86、95%CI:0.63~1.18、p=0.36)。また、事後解析では、プラセボ群で強力な季節性の増悪パターンが認められたが、このパターンはメポリズマブによって有意に変化し(p=0.0006)、とくに秋の増悪のピークが鈍化した(オッズ比:0.64、95%CI:0.42~0.98、p=0.041)。
試験期間中に発現または悪化した有害事象は、メポリズマブ群が146例中42例(29%)、プラセボ群は144例中16例(11%)で認められた。注射部位反応はそれぞれ19例(13%)および7例(5%)で、皮膚/皮下組織障害は10例(7%)および1例(<1%)で、消化器障害は7例(5%)および3例(2%)で発現した。アナフィラキシーが5件(メポリズマブ群3件、プラセボ群2件)発生したが、いずれも試験薬との関連はなかった。
気道トランスクリプトーム解析では、メポリズマブ群とプラセボ群における喘息増悪リスクの差の促進因子として、好酸球と上皮に関連する複数の炎症経路が同定された。
著者は、「メポリズマブによる補助的治療は喘息の増悪を抑制したが、これ以外の喘息のアウトカムには影響を及ぼさなかった」とまとめ、「気道トランスクリプトーム解析により、これらの高リスクの小児における増悪による疾病負担を正確かつ効果的に軽減する可能性のある新たな標的が確認された。また、臨床試験で十分な数の被験者がおらず、喘息への罹患や死亡のリスクが最も高い都市部の黒人およびヒスパニック系の小児において、生物学的製剤や他の介入への治療反応を評価することの重要性が明らかとなった」としている。
(医学ライター 菅野 守)
関連記事

気管支喘息への新規抗IL-5受容体抗体の治療効果は?(解説:小林 英夫 氏)-598
CLEAR!ジャーナル四天王(2016/10/10)

重症好酸球性喘息に新規抗IL-5抗体が有効/NEJM
ジャーナル四天王(2014/09/22)

抗IL-5モノクローナル抗体・mepolizumabは喘息症状の増悪に有効か
ジャーナル四天王(2009/03/18)
[ 最新ニュース ]

急性非特異的腰痛への鎮痛薬を比較~RCT98件のメタ解析/BMJ(2023/03/31)

カフェイン入りコーヒー、期外収縮への影響は?/NEJM(2023/03/31)

妊娠高血圧腎症予防のための低用量アスピリン投与は今後妊娠28週までの投与が基本となるか(解説:前田裕斗氏)(2023/03/31)

新型コロナワクチン接種ガイダンスを改訂/WHO(2023/03/31)

肺がん骨転移へのゾレドロン酸8週ごと投与/日本臨床腫瘍学会(2023/03/31)

m-FOLFOXIRI+セツキシマブ、RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんに有用/日本臨床腫瘍学会(2023/03/31)

双極性障害患者の肥満と脳皮質形態との関連~ENIGMA研究(2023/03/31)

新しい乳がん画像診断技術は標準的なマンモグラフィよりも有用な可能性(2023/03/31)

女性や北国の人、ビタミンD摂取量が多いほど死亡リスクが低い(2023/03/31)
[ あわせて読みたい ]
あなたにとって、開業の「成功」「失敗」とは?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第42回(2022/08/09)
「後継者採用」という甘い誘いに乗ったら…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第41回(2022/07/08)
「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第40回(2022/06/06)
Dr.金井のCTクイズ 初級編(2022/05/17)
診療所の売れ行きに直結する「概要書」の大切さ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第39回(2022/05/09)
医療マンガ大賞2021「たった一時間されど一時間」受賞者描き下ろし作品(ささき かずよ氏)(2022/04/18)
「急ぎ」のお宝承継をゲットできる医師は…?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第38回(2022/04/11)
Dr.田中和豊の血液検査指南 電解質編(2022/04/10)
医療マンガ大賞2021「命のバトン」受賞者描き下ろし作品(ささき かずよ氏)(2022/03/17)
医業承継における「お宝物件」の探し方【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第37回(2022/03/14)