修復不能な腱板断裂、肩峰下バルーンスペーサーは無効/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2022/05/12

 

 修復不能な肩腱板断裂に対し、関節鏡視下デブリドマンと比較しInSpaceバルーン(米国Stryker製)の有効性は認められなかったことが、英国・ウォーリック大学のAndrew Metcalfe氏らが英国の24施設で実施したアダプティブ群逐次デザインの無作為化二重盲検比較試験「START:REACTS試験」の結果、示された。InSpaceデバイスは、2010年にCEマークを取得し、2021年7月に米国食品医薬品局(FDA)で承認されるまで、米国以外では約2万9,000件の手術で用いられていた。しかし、InSpaceデバイスの有効性については、初期の小規模なケースシリーズで有望な結果が報告されていたものの、いくつかの研究では好ましくない結果や炎症・疼痛がみられる症例について報告され、無作為化試験のデータが必要とされていた。著者は今回の結果を受けて、「われわれは修復不能な腱板断裂の治療としてInSpaceバルーンを推奨しない」と結論づけている。Lancet誌オンライン版2022年4月21日号掲載の報告。

12ヵ月後の肩スコアをデブリドマンのみとInSpaceバルーン留置併用で比較

 研究グループは、保存療法の効果がなく手術の適応となる症状を有する修復不能な腱板断裂の成人患者を、上腕二頭筋腱切除を伴う肩峰下腔の関節鏡視下デブリドマンのみ(デブリドマン単独群)、またはInSpaceバルーン留置を併用したデブリドマン(デバイス群)の2群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化は、術中、肩の断裂と周辺構造の評価後に適格性を決定し(医師が腱板断裂を修復できると判断した場合は試験から除外)、断裂サイズを測定した後、中央ウェブシステムにアクセスすることで実施された。

 患者および評価者は割り付けに関して盲検化された。盲検化は、両群とも手術の切開部を同じとし、手術記録の盲検性を保持し、治療群にかかわらず一貫したリハビリテーションプログラムを提供することで達成された。

 主要評価項目は、12ヵ月時の肩スコア(Oxford Shoulder Score[OSS]、範囲:0~48[48が最良])である。

 なお、本試験は2回の中間解析が計画されていたが、最初の中間解析で事前に規定された無益性の基準を満たしたため、2020年7月30日に募集と無作為化が中止された。

デブリドマンのみがInSpaceバルーン留置併用より有効

 2018年6月1日~2020年7月30日の期間に、385例の適格性が評価され、適格と判断され試験参加に同意を得られた患者のうち117例が治療群に割り付けられた(デブリドマン単独群61例、デバイス群56例)。43%が女性、57%が男性であり、患者背景は両群で類似していた。

 12ヵ月時の主要評価項目のデータは117例中114例(97%)から得られた。

 12ヵ月時の平均(±SD)OSSは、デブリドマン単独群(59例)が34.3±11.1、デバイス群(55例)が30.3±10.9であった。適応的デザインで補正した平均群間差は、-4.2(95%信頼区間[CI]:-8.2~-0.26、p=0.037)であり、デブリドマン単独群が優れていた。

 有害事象に関しては、両群間で差はなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)