de novo転移の去勢抵抗性前立腺がん、3剤併用でPFSとOS改善/Lancet

de novo転移のある去勢抵抗性前立腺がんに対し、アンドロゲン除去療法+ドセタキセルにアビラテロンを追加したトリプレット療法は、画像診断による無増悪生存(PFS)および全生存(OS)を改善することが示された。有害事象については、主に高血圧症の発生率が上昇したが、好中球減少症、神経障害などの発生率は増加しなかった。フランス・パリ・サクレー大学のKarim Fizazi氏らが、欧州7ヵ国1,173例を対象に行った第III相の非盲検無作為化2×2因子デザイン試験「PEACE-1試験」の結果を報告した。転移のある去勢抵抗性前立腺がんに対する現行標準治療は、ドセタキセル、第2世代ホルモン療法もしくは放射線療法いずれかとアンドロゲン除去療法による併用療法となっている。今回の結果を踏まえて著者は「トリプレット療法は標準治療となりうるものだろう」と述べている。Lancet誌オンライン版2022年4月8日号掲載の報告。
ベルギー、フランスなどでオープンラベル無作為化2×2因子デザイン試験
研究グループは、放射線治療の有無を問わず、標準治療+アビラテロン+プレドニゾンの有効性と安全性を評価する目的で、2013年11月~2018年12月にかけて、欧州7ヵ国(ベルギー、フランス、アイルランド、イタリア、ルーマニア、スペイン、スイス)の77病院で「PEACE-1試験」を行った。組織学的または細胞学的に確認されたde novo転移のある前立腺がんで、ECOGパフォーマンス・ステータス0~1(または骨痛による2)の18歳以上の男性を無作為に4群に分け、(1)標準治療(アンドロゲン除去療法単独または同療法とドセタキセル75mg/m2静注3週ごと)、(2)標準治療+放射線治療、(3)標準治療+アビラテロン(経口アビラテロン1,000mg/日+経口プレドニゾン5mgを1日2回)、(4)標準治療+放射線治療+アビラテロンをそれぞれ実施した。研究者と患者は、治療割り付けをマスキングされなかった。
主要評価項目は2つで、画像診断によるPFSおよびOS。アビラテロンの有効性は、まず被験者全集団で行い、次に標準治療としてアンドロゲン除去療法+ドセタキセル投与を行った集団で評価された。
アビラテロン群のPFSハザード比0.54
2013年11月27日~2018年12月20日に、1,173例が登録され(その後1例がデータ解析について承諾を取り下げ)、(1)標準治療(296例)、(2)標準治療+放射線治療(293例)、(3)標準治療+アビラテロン(292例)、(4)標準治療+放射線治療+アビラテロン(291例)を受けた。画像診断によるPFSに関する追跡期間中央値は3.5年(IQR:2.8~4.6)、OSに関する追跡期間中央値は4.4年(3.5~5.4)だった。
補正後Cox回帰モデルにより、アビラテロンと放射線治療に相互作用が認められなかったため、アビラテロンの有効性についてはプール解析が行われた。被験者全集団では、アビラテロン群(583例)は、非アビラテロン群(589例)に比べ、画像診断によるPFS期間(ハザード比[HR]:0.54、99.9%信頼区間[CI]:0.41~0.71、p<0.0001)、OS期間(0.82、95.1%CI:0.69~0.98、p=0.030)のいずれにおいても延長が認められた。
アンドロゲン除去療法+ドセタキセルが投与された被験者(アビラテロン投与・非投与を含む355例)においても、画像診断によるPFSのHR(0.50、99.9%CI:0.34~0.71、p<0.0001)、同OSのHR(0.75、95.1%CI:0.59~0.95、p=0.017)に一貫性が認められた。
アンドロゲン除去療法+ドセタキセルが投与された被験者において、Grade3以上の有害事象の発生は、アビラテロン追加群217/347例(63%)、アビラテロン非追加群181/350例(52%)で、なかでも高血圧症の発生率の差が最も大きかった(76例[22%]vs.45例[13%])。一方で、アンドロゲン除去療法+ドセタキセルにアビラテロンを追加投与した群は、アビラテロンを追加しなかった群に比べ、好中球減少症、発熱性好中球減少症、疲労感、神経障害の発生率が増加しなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
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標準治療にアビラテロンの上乗せ効果、転移性ホルモン感受性前立腺がんで有効(解説:宮嶋哲氏)
コメンテーター : 宮嶋 哲( みやじま あきら ) 氏
東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学 主任教授