非重症の高血圧症の妊婦、目標<140/90mmHgの積極的治療が有用/NEJM

<160/100mmHgの非重症の高血圧症の妊婦では、血圧目標値<140/90mmHgの介入戦略が、重症高血圧症となった場合のみ介入する戦略よりも、在胎不当過小児(SGA児)のリスクを増大することなく良好な妊娠アウトカムと関連することが示された。米国・アラバマ大学のAlan T. Tita氏らが、非盲検多施設共同無作為化試験の結果を報告した。妊娠中の非重症の高血圧症治療の有益性と安全性は、明らかになっておらず、血圧目標値<140/90mmHgの介入戦略が、胎児の成長を損なうことなく有害妊娠アウトカムを低減するのかについてデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2022年4月2日号掲載の報告。
重症の子癇前症・妊娠35週未満での医原性の早産の発生などを評価
研究グループは、非重症の高血圧症の単胎児妊娠23週未満の妊婦を、妊娠中の使用が推奨されている降圧薬投与(積極治療)群または重症高血圧症(収縮期血圧160mmHg以上、拡張期血圧105mmHg以上)でない限り降圧薬投与は行わない(対照)群に無作為化し追跡評価した。主要アウトカムは、重症の子癇前症・妊娠35週未満での医原性の早産・胎盤早期剥離または胎児/新生児死亡の複合とした。安全性アウトカムは、SGA児の出生体重(在胎期間別出生時体格標準よりも10パーセンタイル未満)。また、副次アウトカムは、新生児または母体の重篤な合併症・子癇前症・早産の複合などであった。
積極治療群のアウトカム発生のリスク比0.82
2015年9月~2021年3月に女性2万9,772例がスクリーニングを受け、試験には計2,408例が登録され無作為化を受けた(積極治療群1,208例、対照群1,200例)。両群の特性は類似しており、年齢は共に32.3歳、非重症の高血圧症が既知で降圧薬治療を受けている被験者が多数を占め(56%)、新規に非重症の高血圧症との診断を受けたのは22%であった。また、被験者の41%が在胎週数は14週未満であった。主要アウトカムの発生は、対照群より積極治療群で有意に低かった(30.2% vs.37.0%、補正後リスク比0.82[95%信頼区間[CI]:0.74~0.92]、p<0.001)。
出生体重10パーセンタイル未満のSDA児の割合は、積極治療群11.2%、対照群10.4%であった(補正後リスク比:1.04[95%CI:0.82~1.31]、p=0.76)。また、重篤な母体合併症の発生率はそれぞれ2.1% vs.2.8%(リスク比:0.75、95%CI:0.45~1.26)、子癇前症の発生率は24.4% vs.31.1%(0.79、0.69~0.89)、早産は27.5% vs.31.4%(0.87、0.77~0.99)であった。
(ケアネット)
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高血圧合併妊娠において、非重症域の高血圧症の妊婦、目標<140/90mmHgの積極的治療が有用(解説:三戸麻子氏)
コメンテーター : 三戸 麻子( みと あさこ ) 氏
スタンフォード大学内科Primary Care and Population Health
国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母性内科 医長