非がん性疼痛に対するオピオイド処方、注射薬物使用との関連は?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2021/12/03

 

 非がん性疼痛に対し慢性的にオピオイド薬の処方を受けている人において、注射薬物の使用(injection drug use:IDU)を始める割合は全体ではまれであるが(5年以内で3~4%)、オピオイド未使用者と比較すると約8倍であった。カナダ・ブリティッシュコロンビア疾病管理センターのJames Wilton氏らが、カナダの行政データを用いた大規模後ろ向きコホート研究の解析結果を報告した。オピオイド処方と違法薬物または注射薬物の使用開始との関連性については、これまで観察研究などが数件あるが、大規模な追跡研究はほとんどなかった。著者は、「今回の研究で得られた知見は、IDUの開始やそれに伴う2次的な害を防止する戦略や政策に役立つと考えられるが、長期処方オピオイド治療の不適切な減量や中止の理由にしてはならない」とまとめている。BMJ誌2021年11月18日号掲載の報告。

約170万人のデータから、オピオイド使用者を特定、注射薬物開始との関連を解析

 研究グループは、British Columbia Hepatitis Testers Cohortとして知られている大規模な行政データ、Integrated Data and Evaluative Analytics(IDEAs)を用いてデータを解析した。IDEAsのコホートには、1992~2015年にブリティッシュコロンビア州でC型肝炎ウイルスまたはHIVの検査を受けた約170万人が含まれ、これらのデータは、医療機関の受診、入院、救急受診、がんの診断、死亡、および薬局での調剤のデータと連携している。

 解析対象は、ベースライン時に物質使用歴(アルコールを除く)のない11~65歳の人で、2000~15年における非がん性疼痛に対する処方オピオイド使用の全エピソードを特定した。エピソードは、オピオイド処方の開始から終了までを、薬剤が提供されない期間が前後6ヵ月間ある場合と定義し、エピソード内の処方日数やその日数の割合によってエピソードを分類した(急性:エピソード期間<90日、一過性:エピソード期間が≧90日で処方日数が90日未満および/または処方日数の割合が50%未満、慢性:エピソード期間が≧90日で処方日数が90日以上および/または処方日数の割合が50%以上)。社会経済的変数に基づき、慢性、一過性、急性、およびオピオイド未使用者を1対1対1対1の割合でマッチングした。

 IDU開始は、1年以内に、(1)注射薬物の使用に関連する問題(オピオイド、コカイン、アンフェタミンまたはベンゾジアゼピンに対する依存に関する診断コードなど)のエビデンスがある、(2)注射関連感染症の可能性の診断、の2つが認められた場合と定義し、特異性が高く妥当性のある管理アルゴリズムによって特定した。

 オピオイド使用分類(慢性、一過性、急性、未使用)とIDU開始との関連性は、逆確率治療重み付け(IPTW)法によるCoxモデルを用いて評価した。

解析対象は約6万人、慢性的なオピオイド処方は注射薬物使用のリスクが高い

 マッチングコホートには計5万9,804例(オピオイド使用分類それぞれ1万4,951例)が組み込まれた。追跡調査期間中央値5.8年において、1,149例でIDU開始が認められた。IDU開始の5年累積確率は、オピオイド使用分類が慢性(4.0%)で最も高く、次いで一過性(1.3%)、急性(0.7%)、オピオイド未使用(0.4%)の順であった。IDU開始リスクは、オピオイド使用分類が未使用に対して、慢性の場合、8.4倍上昇した(95%信頼区間[CI]:6.4~10.9)。

 慢性疼痛歴のある人に限定した感度分析では、オピオイド使用分類が慢性の場合、IDU開始のリスクは主解析結果より低下したが(5年以内で3.4%)、相対リスクは低下しなかった(ハザード比:9.7、95%CI:6.5~14.5)。

 IDU開始は、オピオイド投与量が多いほど、また、年齢が若いほど、高頻度であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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