高用量オピオイドの長期投与、用量漸減のリスクは?/JAMA

高用量オピオイドを長期にわたり安定的に処方されている患者において、用量漸減は、過剰摂取およびメンタルヘルス危機のリスク増加と有意に関連することが、米国・カリフォルニア大学のAlicia Agnoli氏らによる後ろ向き観察研究の結果、示された。オピオイド関連死亡率の増加や処方ガイドラインにより、慢性疼痛に対してオピオイドを長期間処方された患者における用量漸減が行われている。しかし、過剰摂取やメンタルヘルス危機など、用量漸減に伴うリスクに関する情報は限られていた。JAMA誌2021年8月3日号掲載の報告。
高用量オピオイドの長期投与患者約11万4千例を後ろ向きに解析
研究グループは2008~19年のOptumLabs Data Warehouseデータベースから、匿名化された医療費・薬剤費および登録者のデータを用いて後ろ向き観察研究を実施した。解析対象は、ベースラインの12ヵ月間に高用量オピオイド(モルヒネ換算平均50mg以上)を処方され、2ヵ月以上追跡された米国の成人患者11万3,618例。オピオイドの用量漸減については、7ヵ月の追跡期間中の6つの期間(1期間60日、一部期間は重複)のいずれかにおいて、1日平均投与量が少なくとも15%相対的に減量された場合と定義し、同期間中の最大月間用量減量速度を算出した。
主要アウトカムは、最長12ヵ月の追跡期間中の(1)薬剤の過剰摂取または離脱、(2)メンタルヘルス危機(うつ、不安、自殺企図)による救急受診。統計には、離散時間型の負の二項回帰モデルを用い、用量漸減(vs.用量漸減なし)および用量減量速度に応じた2つのアウトカムの補正後発生率比(aIRR)を推算して評価した。
用量漸減で過剰摂取やメンタルヘルス危機が約2倍増加
解析対象11万3,618例のうち、用量漸減が行われた患者は2万9,101例(25.6%)、行われなかった患者は8万4,517例(74.4%)で、患者背景は、女性がそれぞれ54.3% vs.53.2%、平均年齢57.7歳 vs.58.3歳、民間保険加入38.8% vs.41.9%であった。用量漸減後の期間(補正後発生率は9.3件/100人年)は、非漸減期間(5.5件/100人年)と比べて過剰摂取イベントの発生との関連がみられた(補正後発生率の差:3.8/100人年[95%信頼区間[CI]:3.0~4.6]、aIRR:1.68[95%CI:1.53~1.85])。
用量漸減は、メンタルヘルス危機イベントの発生とも関連していた。補正後発生率は同期間7.6件/100人年に対して、非漸減期間3.3件/100人年であった(補正後発生率の差:4.3/100人年[95%CI:3.2~5.3]、aIRR:2.28[95%CI:1.96~2.65])。
また、最大月間用量減量速度が10%増加することで、過剰摂取のaIRRは1.09(95%CI:1.07~1.11)、またメンタルヘルス危機のaIRRは1.18(95%CI:1.14~1.21)増加することが認められた。
これらの結果を踏まえて著者は、「今回の結果は、用量漸減の潜在的な有害性に関する問題を提起するものであるが、観察研究のため解釈は限定的なものである」との見解を述べている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
関連記事

添付文書改訂:オルミエント錠に新型コロナ肺炎追加/イグザレルトがDOACで初の小児適応追加/オキシコンチンTR錠に慢性疼痛追加【下平博士のDIノート】第73回
下平博士のDIノート(2021/04/28)

第17回 治療編(1)薬物療法・その4【エキスパートが教える痛み診療のコツ】
エキスパートが教える痛み診療のコツ(2020/09/14)

第22回 痛み診療のコツ・治療編(2)光線療法(1)【エキスパートが教える痛み診療のコツ】
エキスパートが教える痛み診療のコツ(2021/07/15)
[ 最新ニュース ]

骨髄線維症の症状改善、新規クラスJAK阻害薬の有用性は?/Lancet(2023/02/09)

インフル家庭内感染率、コロナ流行前の2.31倍に/JAMA(2023/02/09)

tTMBがPD-L1陽性NSCLCに対するペムブロリズマブ単剤の治療効果を予測(KEYNOTE-042)/Ann Oncol(2023/02/09)

SNRI使用と口渇リスク(2023/02/09)

骨転移診療ガイドライン改訂、薬剤などのエビデンス蓄積を反映(2023/02/09)

COVID-19の2価ワクチン接種でXBB系統の感染リスクが半減(2023/02/09)

短時間のPET-CT検査でホルモン分泌異常による高血圧を診断(2023/02/09)

米FDAが喘息の2剤配合吸入薬を承認(2023/02/09)
[ あわせて読みたい ]
院長が倒れた!残された家族は書類探しに大わらわ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第23回(2021/08/06)
経営資料は秘密!? それは「身体を見ずに診察して」と同じですよ!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第22回(2021/07/26)
「売れなければ閉じればいい…」、閉院にいくらかかるかご存じですか?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第21回(2021/07/12)
「うちの診療所引き継ぐ人いない?」、うっかり漏らして大惨事!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第20回(2021/06/28)
早めに動かないと売れ残る!「ヤバい診療所」のパターン2つ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第19回(2021/06/14)
「もっと高く売れるはず…」、その思い込みが売れ残りにつながる【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第18回(2021/05/24)
診療所を売った後、「もう少し働く」メリット&デメリット【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第17回(2021/05/10)
診療所の後継者は自分で育てる!が失敗してしまう理由とは?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第16回(2021/04/26)
この診療所を子供に継いでもらいたい…、がうまくいかない理由【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第15回(2021/04/12)
書類仕事は苦手…、そんなこと言ってると痛い目に遭いますよ、という話【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第14回(2021/03/22)