心血管疾患の1次予防、スタチンは有益性・有害性のバランス良好/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2021/07/26

 

 心血管疾患の1次予防において、スタチンの有害事象リスクは心血管疾患の予防効果を上回るものではなく、有益性と有害性のバランスは概して良好であることが示唆された。一方で、安全性の懸念を考慮し治療開始前にスタチンの種類や投与量を調整することを支持するエビデンスは限定的だったという。英国・オックスフォード大学のTing Cai氏らが、ネットワークメタ解析によるシステマティックレビューの結果を報告した。現行のスタチンの種類および投与量に関する推奨事項は、異なるレジメンの多様な有害事象は考慮せず、脂質低下効果に基づくものとなっていることから、研究グループは心血管疾患の1次予防におけるスタチンと有害事象の関連性、種類や投与量別にどのような関連性があるのかを調べた。BMJ誌2021年7月14日号掲載の報告。

無作為化比較試験62件、約12万例についてメタ解析

 研究グループは、過去のシステマティックレビューおよび2020年8月までに発表された論文をMedline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsで検索し、心血管疾患の非既往成人を対象に、スタチンvs.非スタチン治療を検討した、または種類や投与量が異なるスタチン治療を比較した無作為化比較試験を特定した。

 主要評価項目は、一般的な有害事象(自己申告の筋症状、臨床的に確認された筋障害、肝機能障害、腎機能不全、糖尿病、眼症状)、副次評価項目は有効性の指標としての心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡であった。

 ペアワイズメタ解析を行い、スタチンvs.非スタチンの各評価項目のオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出し、1年間の治療を受けた患者1万人当たりのイベント数の絶対リスク差を推定した。また、異なる種類のスタチンの有害事象を比較するため、ネットワークメタ解析を行うとともに、各スタチンの有害事象の用量反応性をEmaxモデルに基づくメタ解析を行い評価した。

 計62件の無作為化比較試験、12万456例が解析に組み込まれた。追跡期間は平均3.9年であった。

肝機能障害リスクのORは1.33、眼症状は1.23

 スタチンは、臨床的に確認された筋障害ならびに糖尿病との関連は認められなかったが、自己申告の筋症状(21試験、OR:1.06[95%CI:1.01~1.13]、絶対リスク差:15[95%CI:1~29])、肝機能障害(21試験、1.33[1.12~1.58]、8[3~14])、腎機能不全(8試験、1.14[1.01~1.28]、12[1~24])、眼症状(6試験、1.23[1.04~1.47]、14[2~29])のリスク増加がみられた。ただし、リスクの増加は、主要心血管イベントのリスク減少を上回るものではなかった。

 アトルバスタチン、lovastatin、ロスバスタチンはそれぞれ、いくつかの有害事象と関連していたが、スタチンの種類による有意差はほとんど認められなかった。肝機能障害に対するアトルバスタチンの効果については用量反応性が認められたが、他のスタチンについては有害事象の用量反応性について結論が得られなかった。

(ケアネット)

専門家はこう見る

コメンテーター : 島田 俊夫( しまだ としお ) 氏

地方独立行政法人静岡県立病院機構 静岡県立総合病院 リサーチサポートセンター センター長

J-CLEAR評議員

原著論文はこちら