お知らせがあります

妊娠期の暑さへの曝露が子どもの脳の発達に影響か

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2026/08/14

 

 気候変動が子どもの脳発達に影響を及ぼす可能性があるようだ。妊娠期および乳児期に高温環境にさらされることが、その後の視床の成長速度の低下と関連することが、新たな研究で示された。視床は、嗅覚を除く全ての感覚情報を大脳皮質へ送る中継点の役割を果たすほか、運動調節や意識、記憶、情動のコントロールにも関与している重要な脳領域である。バルセロナ国際保健研究所(スペイン)のEsmee Essers氏らによるこの研究成果は、「Environment International」8月号に掲載された。Essers氏は、「今後の研究では、人生早期の暑さへの曝露が神経発達障害の発症に関与するかどうか、また視床の発達の変化が両者の関連を説明する手がかりとなるかどうかを検討する必要がある」と述べている。

 研究グループによると、視床は妊娠初期から発達が始まり、その発達には十分な血液供給が必要であるため、高温の影響を特に受けやすい。また、高温への曝露は胎盤や胎児への血液供給にも影響を及ぼす可能性があるという。

 この研究では、オランダの3,251人の小児を対象に、妊娠期から8.5歳までの高温および低温への曝露が、9〜15歳時点での脳構造の変化と関連するかどうかが検討された。対象児はいずれも、2002年に開始された長期出生コホート研究への参加者で、妊娠期から成人期までの成長、健康状態、発達の経過が追跡されていた。10.1歳時と14.0歳時に取得されたMRIデータを用いて、11の脳構造の体積変化が評価された。論文の筆頭著者であるバルセロナ国際保健研究所Laura Granes氏は、研究目的について、「われわれの研究は、受胎時から8.5歳までの期間における暑さや寒さへの曝露が、思春期から青年期にかけての脳発達の変化と関連するかどうかを調べ、脳が最も影響を受けやすい時期を特定することを目的とした」と説明している。

 その結果、受胎から生後5カ月までの期間では、基準温度(平均12.5℃)の環境への曝露と比べて、平均気温20.5℃の高温環境への曝露が、その後の視床体積の成長速度の低下と関連していた。平均気温20.5℃の環境への累積曝露に伴う視床体積の成長量の差は、妊娠第1トリメスターで−25.80mm3、第2トリメスターで−25.60mm3、第3トリメスターで−22.92mm3、生後3カ月間で−5.31mm3であった。低温への曝露や、視床以外の脳構造については、影響を受けやすい時期は確認されなかった。また、視床の成長遅延は、思春期における攻撃的行動や規則違反行動などの外在化行動症状と関連した。一方、認知能力との関連は確認されなかった。

 では、なぜ外気温がこのような違いをもたらすのだろうか。研究グループは、暑さは母体のストレスホルモンのレベルを上昇させる一方で、胎盤が胎児をこうしたホルモン変化から守る能力を低下させる可能性があると推測している。また、高温環境は神経伝達物質であるセロトニンの働きを損なう可能性もあるという。セロトニンは、妊娠期から乳児期にかけて、視床と大脳皮質を結ぶ神経回路の形成に重要な役割を果たしている。

 論文の上席著者である同研究所のMÒnica Guxens氏は、「地球温暖化により世界各地でより深刻かつ長期化する熱波が発生している中で、この研究結果は重要な意味を持つ可能性がある。世界の気温が上昇し続ける中、妊娠期および乳児期早期の暑熱曝露を減らすことは、小児の脳発達を守る上で重要な役割を果たす可能性がある」と述べている。

[2026年07月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2026HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら