多剤併用療法は、複雑かつ治療抵抗性の精神疾患をマネジメントするうえで、重要な治療選択肢の1つである。一方、有害な薬物相互作用、服薬アドヒアランスの低下、健康アウトカムの悪化といったリスクも伴う。多剤併用療法に対する専門職間の見解は、臨床的な意思決定や処方行動に大きな影響を及ぼす。サウジアラビア・King Abdullah International Medical Research CenterのAmal I. Khalil氏らは、精神科医療における多剤併用療法に関する医療従事者の知識と態度を評価し、精神科看護師、精神科医、薬剤師の見解を比較するため、本研究を実施した。また、これらの要因が処方行動や専門職間の連携にどのような影響を与えるかについても検討した。PLOS One誌2026年7月14日号の報告。
サウジアラビア・ジェッダにあるErada Complex for Mental Health and Addictionにおいて、コンバージェント・ミックスド・メソッド(収束型混合研究法)のアプローチを採用し、検討を行った。本研究には、精神科医32人、精神科看護師158人、薬剤師31人を含む計221人の医療従事者が参加した。知識と態度を評価するため、妥当性が検証された尺度を用いて量的データを収集した。一方、自由記述回答やグループディスカッションを通じて質的な知見を収集した。
主な結果は以下のとおり。
・専門職間で知識レベルに差が見られ、精神科医が最も包括的な理解を示し(84.2±11.0)、次いで薬剤師(81.5±10.0)、精神科看護師(79.5±9.8)の順であった。
・多剤併用療法に対する態度にも違いがあり、精神科医が最も肯定的な見解を示した(3.79±0.49)のに対し、看護師や薬剤師は、副作用や服薬負担への懸念から、より慎重な姿勢を示した。
・知識と態度のスコアの間には、有意な正の相関(r=0.653、p<0.05)が認められた。
・専門的経験年数や服薬管理に対する自信といった社会人口統計学的要因が、服薬管理に関する知識と態度の双方に影響を及ぼしていた。
・質的調査の結果では、専門職間の緊張関係が浮き彫りになった。精神科看護師は、より慎重なアプローチを主張し、精神科医は臨床的必要性を強調し、薬剤師は薬物療法の安全性最適化に重点を置く傾向が見られた。
著者らは「精神科医療における多剤併用療法に対して、医療従事者は、それぞれの専門的役割や責任に裏打ちされた、異なるレベルの認識や態度を示した。精神科医は多剤併用療法を比較的許容していたのに対し、精神科看護師は患者への負担を懸念し、薬剤師は安全性を最優先する傾向が見られた。患者アウトカムを改善するためには、多職種連携の強化と多剤併用療法に関する継続的な教育が不可欠である」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)