Novavax製コロナワクチンの有効率89.7%、第III相試験/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2021/07/12

 

 健康成人への遺伝子組み換えナノ粒子ワクチンNVX-CoV2373(米国Novavax製)の2回接種はプラセボと比較して、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染予防の有効率が89.7%と高率で、B.1.1.7変異株(α株)にも同程度の効果を有することが、英国・ロンドン大学セントジョージ校のPaul T. Heath氏ら研究グループが実施した「2019nCoV-302試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年6月30日号に掲載された。

英国33施設のプラセボ対照無作為化第III相試験

 本研究は、SARS-CoV-2感染の予防におけるNVX-CoV2373の安全性と有効性の評価を目的とする評価者盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2020年9月28日~11月28日の期間に、英国の33施設で参加者の登録が行われた(米国Novavaxの助成による)。

 対象は、年齢18~84歳の男性または非妊娠女性で、健康または安定期慢性疾患(多剤併用療法[HAART]を受けているHIV感染、心疾患、呼吸器疾患の患者を含む)の集団であった。

 被験者は、21日間隔で2回、NVX-CoV2373ワクチン(遺伝子組み換えナノ粒子スパイク蛋白5μg+Matrix-Mアジュバント50μg)の筋肉内注射を受ける群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 有効性の主要エンドポイントは、ベースラインで血清学的に陰性の参加者において、2回目接種から7日以降に発症し、ウイルス学的に確定された軽症、中等症、重症のSARS-CoV-2感染とされた。

 1万5,187例が無作為化の対象となり、1万4,039例(ワクチン群7,020例、プラセボ群7,019例)が有効性のper-protocol集団に含まれた。全体の年齢中央値は56歳(27.9%が65歳以上)、48.4%が女性であった。44.6%が、米国疾病管理予防センターの定義で重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスク因子とされる併存疾患を1つ以上有していた。

65歳以上の有効率88.9%、B.1.1.7変異株86.3%

 2回目の接種から7日以降に症状の発現が認められ、ウイルス学的に確定されたSARS-CoV-2感染者は、ワクチン群が10例(6.53/1,000人年)、プラセボ群は96例(63.43/1,000人年)であり、ワクチンの有効率は89.7%(95%信頼区間[CI]:80.2~94.6)であった。

 ワクチン群のSARS-CoV-2感染者10人に入院および死亡者はなく、このブレークスルー例のうち8人がB.1.1.7変異株(α株)に感染していた。また、重症COVID-19感染症は5例報告され、いずれもプラセボ群であった(入院1例、救急診療部受診3例、自宅療養1例)。

 65歳以上のワクチン有効率は88.9%(95%CI:12.8~98.6)であった。事後解析では、B.1.1.7変異株に対する有効率は86.3%(71.3~93.5)、B.1.1.7以外の変異株では96.4%(73.8~99.5)だった。

 非自発的な報告による局所的有害事象(痛み、圧痛、紅斑、腫脹)の頻度は、初回(57.6% vs.17.9%)および2回目接種(79.6% vs.16.4%)ともワクチン群で高く、全身性有害事象(頭痛、疲労、悪心・嘔吐、倦怠感、筋肉痛、関節痛、体温上昇)も、初回(45.7% vs.36.3%)および2回目接種(64.0% vs.30.0%)のいずれもワクチン群で高かった。

 自発的な報告による有害事象はワクチン群で多かった(25.3% vs.20.5%)が、重篤な有害事象(0.5% vs.0.5%)、接種中止の原因となった有害事象(0.3% vs.0.3%)、COVID-19でとくに注目すべき有害事象(0.1% vs.0.3%)の発現率はいずれも両群で同程度で、頻度は低かった。また、反応原性(reactogenicity)は全般に軽度で一過性であり、反応は高齢者で頻度が低く、より軽度で、2回目以降に多かった。

 著者は、「NVX-CoV2373は標準的な冷蔵温度で保存でき、スパイク蛋白抗原の多くのエピトープへの反応を誘導する可能性がある。これらの特性は、新たな変異株に対する継続的なワクチン接種の必要性を考慮すると、このワクチンの世界に向けた効率的な導入において重要である」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)