低出生体重児、出生直後からのカンガルーケアで生存率改善/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2021/06/04

 

 出生時体重が1.0~1.799kgの低出生体重児において、出生直後からカンガルーケアを受けた新生児は、従来ケアで状態が安定した後にカンガルーケアを開始した新生児と比較し、28日死亡率が低下した。72時間死亡率も、出生直後からカンガルーケアを受けた新生児のほうが、有意差は認められなかったものの良好であった。WHO Immediate KMC Study Groupが、アフリカとインドの5施設で実施した無作為化試験の結果を報告した。カンガルーケアは、母親または他のケア提供者が新生児を胸の上で抱き皮膚と皮膚を接触させるなどの新生児ケアの一種で、従来、低出生体重児(2.0kg未満)において状態安定後にカンガルーケアを受けた新生児は受けなかった新生児と比べ死亡率が低下することが示されていた。しかし、低出生体重児の死亡の大多数は、状態安定前に生じている。低出生体重児において出生後すぐにカンガルーケアを開始した場合の安全性と有効性は、これまで不明であった。NEJM誌2021年5月27日号掲載の報告。

アフリカとインドの5施設で、3,211例の新生児と母親を対象に無作為化試験

 研究グループは、ガーナ、インド、マラウイ、ナイジェリア、タンザニアの病院5施設において、出生時体重が1.0~1.799kgの低出生体重児を、出生直後にカンガルーケアを開始する群(介入群)と、状態が安定するまで保育器やラジアントウォーマーで従来ケアを受けた後にカンガルーケアを開始する群(対照群)に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、新生児期(生後28日間)および出生後72時間以内の死亡であった。

 計3,211例の新生児と母親が、介入群(1,609例)または対照群(1,602例)に無作為に割り付けられた。

出生直後からカンガルーケア開始で、新生児期死亡も生後72時間死亡も減少

 新生児集中治療室における1日の皮膚接触時間中央値は、介入群16.9時間(四分位範囲[IQR]:13.0~19.7)、対照群1.5時間(0.3~3.3)であった。

 生後28日間の死亡は、介入群191例(12.0%)、対照群249例(15.7%)であり、介入群で有意に死亡リスクが低下した(死亡の相対リスク:0.75、95%信頼区間[CI]:0.64~0.89、p=0.001)。出生後72時間以内の死亡は、介入群74例(4.6%)、対照群92例(5.8%)であった(死亡の相対リスク:0.77、95%CI:0.58~1.04、p=0.09)。

 出生直後からカンガルーケアを受けた低出生体重児群で死亡率の低下が認められたため、データ安全性モニタリング委員会の勧告により試験は早期中止となった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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