中等度~重度うつ病に対するpsilocybin vs.エスシタロプラム/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2021/04/23

 

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRobin Carhart-Harris氏らは、6週間の第II相無作為化二重盲検比較試験の結果、中等度~重度大うつ病性障害に対しpsilocybinは選択的セロトニン再取り込み阻害薬のエスシタロプラムと比較して、6週時のQIDS-SR-16うつ症状スコアの変化に基づく抗うつ作用に有意差はないことを明らかにした。psilocybinおよびその代謝物のシロシンは催幻覚物質で、その作用は主に5-HT2A受容体アゴニスト作用による。これまでに、治療抵抗性うつ病患者を対象とした小規模な非盲検試験ではpsilocybinの抗うつ症状改善効果が報告されていた。しかし、確立された既存のうつ病治療薬とpsilocybinの直接比較は行われていなかった。著者は今回の結果に基づき、「psilocybinと既存の抗うつ薬を比較検証する、より大規模で長期的な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2021年4月15日号掲載の報告。

psilocybin 25mgの3週間ごと2回投与の有効性をエスシタロプラムと比較

 研究グループは、長期間持続する中等度~重度大うつ病性障害患者を、psilocybin群(psilocybin 25mgを3週間隔で2回投与+プラセボを1日1回6週間投与)、およびエスシタロプラム群(psilocybin 1mgを3週間隔で2回投与+エスシタロプラムを1日1回6週間投与)のいずれかに1対1の割合で割り付けた。なお、全例に心理学的サポートを行った。

 主要評価項目は、16項目版自己記入式簡易抑うつ症状尺度(QIDS-SR-16:スコア範囲0~27、スコアが高いほどうつ症状が重症であることを示す)のベースラインから6週時までの変化であった。副次評価項目は、6週時のQIDS-SR-16による奏効率(>50%のスコア減少)、寛解率(スコアが5点以下)などの16項目とした。

6週時のQIDS-SR-16の変化量は両群で有意差なし

 59例が登録され、psilocybin群30例、エスシタロプラム群29例に割り付けられた。

 ベースラインのQIDS-SR-16平均スコアは、psilocybin群14.5点、エスシタロプラム群16.4点であった。6週時におけるベースラインからの変化量(平均±SE)は、psilocybin群が-8.0±1.0点、エスシタロプラム群が-6.0±1.0点であり、群間差は2点であった(95%信頼区間[CI]:-5.0~0.9、p=0.17)。

 QIDS-SR-16による奏効率は、psilocybin群70%、エスシタロプラム群48%、群間差22ポイント(95%CI:-3~48)、寛解率はそれぞれ57%、28%で群間差28ポイント(95%CI:2~54)であった。

 その他の副次評価項目は、全般的にエスシタロプラムよりもpsilocybin群のほうが良好であったが、多重比較の補正は行われなかった。有害事象の発現率は、両群で類似していた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)