新型コロナ、4ヵ月後も7割に胸部CT異常/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2021/03/29

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による長期的な後遺症の詳細は知られていない。フランス・パリ・サクレー大学のLuc Morin氏らCOMEBAC試験の研究グループは、COVID-19で入院した患者の、退院4ヵ月後の健康状態を調査した。その結果、約半数が少なくとも1つの、COVID-19罹患前にはなかった新たな症状(疲労、認知症状、呼吸困難など)を訴え、勧奨を受けて外来を受診した患者の約6割に胸部CTで肺の異常所見(多くはわずかなすりガラス状陰影)が、約2割に線維化病変が認められるなどの実態が明らかとなった。JAMA誌オンライン版2021年3月17日号掲載の報告。

フランスの単一施設の前向きコホート研究

 本研究は、2020年3月1日~5月29日の期間にCOVID-19でパリ・サクレー大学病院(Bicetre病院)に入院し、その後退院した成人患者を対象とする前向きコホート研究である(フランスAssistance Publique-Hopitaux de Paris[AP-HP]の助成による)。

 患者が退院後3~4ヵ月の時点(同年7月15日~9月18日)で、電話による診察が行われた。関連症状が持続している患者や、集中治療室(ICU)に入室していた患者は、外来を受診して追加の健康評価を受けるよう勧められた。

 電話では、Q3PC認知スクリーニング質問票と症状チェックリストを用いて、呼吸器、認知機能、機能的症状などの評価が行われた。外来受診患者には、肺機能検査、肺CT検査、心理測定/認知検査(36-Item Short-Form Health Survey[SF-36]、20-item Multidimensional Fatigue Inventory[MFI-20]を含む)が施行され、元ICU入室患者や症状が持続している患者には心エコー図検査が実施された。

元ICU入室患者の23%で不安、18%でうつ状態、7%で心的外傷後症状

 478例(平均年齢61[SD 16]歳、女性201例[42%])が電話による診察を受け、このうち177例(37%、平均年齢56.9[13.2]歳、女性68例[38.4%])が外来を受診した。478例中142例が元ICU入室患者で、このうち外来を受診したのは97例だった。

 電話診察では、244例(51%)が、COVID-19罹患前にはなくCOVID-19で入院中に新たに発症し、この電話診察時まで持続する症状が1つ以上あると申告した。症状は、疲労(31%)、呼吸困難(16%)、持続性の知覚障害(12%)、ベースラインから5%以上の体重減少(9%)などであった。また、21%に認知症状がみられ、Q3PC質問票による認知検査で18%が記憶障害と判定された。

 MFI-20(145例)の意欲低下スコア(1[最良]~5[最悪]点)中央値は4.5点(IQR:3.0~5.0)、精神的疲労感スコア(1[最良]~5[最悪]点)中央値は3.7点(3.0~4.5)であった。また、SF-36(130例)の下位尺度である「身体的理由による活動の一部制限」のスコア(100[最良]~0[最悪]点)中央値は25点(25.0~75.0)だった。

 外来受診では、肺CT検査で63%(108/171例)に異常が認められ、42%(72/170例)はわずかなすりガラス状陰影であった。線維化病変は19%(33/171例)にみられ、1例を除き、病変の範囲は肺実質の25%未満であった。急性呼吸促迫症候群(ARDS)と診断された49例のうち19例(39%)に線維化病変が認められた。

 元ICU入室患者(94例)では、23%(22例)に不安、18%(17例)にうつ状態、7%(7例)に心的外傷後症状がみられた。元ICU入室患者(83例)の10%(8例)が、左室駆出率50%未満であった。また、新規慢性腎臓病が元ICU入室患者の2例で発生した。

 血清検査では97%(172/177例)が抗SARS-CoV-2抗体陽性であった。この172例中3例は、RT-PCR法でSARS-CoV-2陽性となったことが一度もなかったが、臨床所見とCT所見によりCOVID-19と診断されていた。

 著者は、「コホートに対照群はおらずCOVID-19罹患前の評価が行われていないことから、本調査で得られた知見は限定的なものとなる。より長期のアウトカムや、これらの知見が疾患との関連を反映しているかを解明するには、さらなる研究を要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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