米空母内の新型コロナ感染リスク、甲板上より船内で高い/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/11/20

 

 米原子力空母セオドア・ルーズベルト(乗組員4,779人)において、2020年3月23日~5月18日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクが発生、U.S. Navy Bureau of Medicine and SurgeryのMatthew R. Kasper氏らがその調査結果をまとめた。SARS-CoV-2の感染は、狭苦しい閉鎖的な空間で無症状および症状発現前の感染者によって促進され、空母内で急速に拡大したという。SARS-CoV-2陽性と判定された乗組員の約半数は、無症状であった。NEJM誌オンライン版2020年11月11日号掲載の報告。

COVID-19の1例目発生後、全乗組員にPCR検査を実施、10週間以上追跡

 研究グループは、リアルタイム逆転写DNAポリメラーゼ連鎖反応(rRT-PCR)の検査結果を含めた、全乗組員の臨床および人口統計学的データを解析した。全乗組員は、検査結果や症状の有無にかかわらず、最低10週間の追跡調査を受けた。

 乗組員は平均年齢27歳で若者が多く、男性が78.3%を占め、全般的に健康状態は良好で、米海軍の海上任務基準を満たしていた。

 当初、3人の乗組員がCOVID-19を示唆する症状で医療部を受診し、rRT-PCR検査の結果、3人全員がSARS-CoV-2陽性と判定された(2020年3月23日)。その後、24時間以内に有症状者および濃厚接触者を特定、同艦が3月27日にグアム海軍基地に到着後、入院・隔離措置が取られた。

SARS-CoV-2陽性者は26.6%、陽性判明時点で76.9%は無症状

 乗組員全員にrRT-PCR検査が行われ、アウトブレイク期間中にSARS-CoV-2陽性が確認された乗組員は1,271人(26.6%)であった。このうち1,000人以上が最初の感染確認から5週以内に確認された。さらに、60人(1.3%)は、rRT-PCR検査は陰性であったが専門委員会によるCOVID-19の臨床基準を満たしており、感染が疑われた。

 SARS-CoV-2陽性が確認された1,271人中、978人(76.9%)は、陽性と判明した時点では無症状で、699人(55.0%)は臨床経過中のいずれかの時点で症状が現れた。

 COVID-19疑い/確定の1,331人中、23人(1.7%)が入院し、4人(0.3%)が集中治療を受け、1人が死亡した。後ろ向きに調べたところ、2020年3月11日という早い時期に症状が発現していた乗組員がいた。機関室や船内の狭い空間で任に就いていた乗組員のほうが、甲板上の乗組員よりも感染のリスクが高かった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)