潜在性甲状腺機能低下症併発の急性心筋梗塞患者、ホルモン療法は有効か/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/08/04

 

 潜在性甲状腺機能低下症を併発した急性心筋梗塞患者において、甲状腺ホルモン製剤レボチロキシンはプラセボと比較して、52週後の左室駆出率(LVEF)を改善しないことが、英国・ニューカッスル大学のAvais Jabbar氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年7月21日号に掲載された。甲状腺ホルモンは心筋収縮能の調節に重要な役割を果たしており、急性心筋梗塞患者における潜在性甲状腺機能低下症は不良な予後と関連するという。

LVEFの改善を評価する無作為化試験

 研究グループは、潜在性甲状腺機能低下症を併発した急性心筋梗塞患者におけるレボチロキシン治療の左室機能への効果を評価する目的で、二重盲検無作為化臨床試験を実施した(責任著者は、英国国立衛生研究所[NIHR]の助成を受けた)。

 試験には英国の6病院が参加した。2015年2月~2016年12月の期間に、年齢18歳以上、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)または非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)で、潜在性甲状腺機能低下症を発症した患者が登録された。最後の患者のフォローアップは2017年12月であった。

 被験者は、レボチロキシンまたはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。レボチロキシン治療は、血清チロトロピン(甲状腺刺激ホルモン[TSH])値0.4~2.5mU/Lを目標に、25μg(カプセル、1日1回)で開始し、52週間の投与が行われた。

 主要アウトカムは52週時のLVEFであり、MRIで評価し、年齢、性別、急性心筋梗塞の種類、冠動脈の病変領域、ベースラインのLVEFで補正した。副次アウトカムは、左室容積、梗塞サイズ(60例のサブグループで評価)、有害事象、健康状態・健康関連QOL・うつ病の患者報告アウトカムであった。

6つの副次アウトカムにも有意差はない

 95例(平均年齢:63.5歳[SD 9.5]、男性:72例[76.6%]、STEMI:65例[69.1%])が登録され、レボチロキシン群に46例、プラセボ群には49例が割り付けられた。ベースラインの全体の血清チロトロピン値中央値は5.7mU/L(四分位範囲:4.8~7.3)、遊離サイロキシン値の平均値は1.14(SD 0.16)ng/dLであった。

 52週時の主要アウトカムの評価は85例(89.5%、レボチロキシン群39例、プラセボ群46例)で行われた。ベースラインおよび52週時の平均LVEFは、レボチロキシン群がそれぞれ51.3%および53.8%であったのに対し、プラセボ群ではそれぞれ54.0%および56.1%であり、両群間に有意な差はなかった(補正後群間差:0.76%、95%信頼区間[CI]:-0.93~2.46、p=0.37)。

 また、6つの副次アウトカムはいずれも、レボチロキシン群とプラセボ群の間で有意な差は認められなかった。

 心血管系の有害事象は、レボチロキシン群で15件(33.3%)、プラセボ群で18件(36.7%)、心血管系の重篤な有害事象は、それぞれ2件(4.4%)および6件(12.2%)で発現した。また、非心血管系の有害事象は、レボチロキシン群で32件(64.4%)、プラセボ群で27件(55.1%)、非心血管系の重篤な有害事象は、それぞれ8件(17.8%)および11件(22.4%)でみられた。

 著者は、「これらの知見は、急性心筋梗塞患者における潜在性甲状腺機能低下症の治療を支持しない」としている。

(医学ライター 菅野 守)