COVID-19死亡例、肺病理所見の特徴は?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/07/21

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行における主な死因は進行性呼吸不全であるが、死亡例の末梢肺の形態学的・分子的変化はほとんど知られていないという。ドイツ・ヴィッテン・ヘアデッケ大学のMaximilian Ackermann氏らは、COVID-19で死亡した患者の肺組織の病理所見を調べ、インフルエンザで死亡した患者の肺と比較した。その結果、COVID-19患者の肺で顕著な特徴として、重度の細胞膜破壊を伴う血管内皮傷害がみられ、肺胞毛細血管内の微小血栓の有病率が高く、新生血管の量が多いことを確認した。NEJM誌2020年7月9日号掲載の報告。

インフルエンザ例の剖検肺、非感染対照肺と比較

 研究グループは、COVID-19で死亡した患者の剖検時に得られた肺の形態学的・分子的特徴を、インフルエンザで死亡した患者の肺および年齢をマッチさせた非感染対照肺と比較した(米国国立衛生研究所[NIH]など助成による)。

 COVID-19で死亡した患者7例(女性2例[平均年齢68±9.2歳]、男性5例[80±11.5歳])、インフルエンザA(H1N1)感染に続発した急性呼吸促迫症候群(ARDS)で死亡した患者7例(女性2例[62.5±4.9歳]、男性5例[55.4±10.9歳])、年齢をマッチさせた非感染対照(肺移植ドナー)10例(女性5例[68.2±6.9歳]、男性5例[79.2±3.3歳])の肺組織が、解析の対象となった。

 肺の評価は、7色免疫組織化学的解析、マイクロCT画像、走査型電子顕微鏡、血管鋳型法、遺伝子発現の直接多重測定法を用いて行われた。

ACE2発現細胞が多い、微小血栓9倍、新生血管量2.7倍に

 インフルエンザ肺炎患者の肺は、COVID-19患者の肺に比べて重く(平均重量:2,404±560g vs.1,681±49g、p=0.04)、非感染対照肺(1,045±91g)はインフルエンザ肺(p=0.003)およびCOVID-19肺(p<0.001)に比べ軽かった。

 1視野当たりのアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)発現細胞数は、非感染対照群の肺胞上皮細胞(0.053±0.03)と毛細血管内皮細胞(0.066±0.03)ではまれであったが、これに比べCOVID-19群とインフルエンザ群の肺胞上皮細胞(0.25±0.14、0.35±0.15)、および毛細血管内皮細胞(0.49±0.28、0.55±0.11)では多く認められた。ACE2陽性リンパ球は、非感染対照群の血管周囲組織や肺胞内にはみられなかったが、COVID-19群とインフルエンザ群では認められた(0.22±0.18、0.15±0.09)。

 COVID-19群とインフルエンザ群の末梢肺の組織パターンでは、血管中心性炎症所見として、血管周囲のT細胞浸潤を伴うびまん性肺胞傷害が認められた。また、COVID-19群の肺では、このほかに、内皮細胞内の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)の存在と細胞膜破壊を伴う重度の血管内皮傷害に基づく特徴的な血管像が確認された。

 249個の遺伝子に関して炎症関連遺伝子発現の多重解析を行ったところ、79個の炎症関連遺伝子がCOVID-19群の肺にのみ発現していたのに対し、インフルエンザ群の肺にのみ発現していたのは2つだけで、7つの遺伝子は両群で共通に発現していた。

 一方、COVID-19群の肺血管の組織学的解析では、微小血管障害を伴う広範な血栓がみられた。肺胞毛細血管内の微小血栓の有病率は、COVID-19群がインフルエンザ群の9倍であった(血管腔面積1cm2当たりの平均血栓数:159±73個vs.16±16個、p=0.002)。

 また、COVID-19群の肺では、重積型血管新生による新生血管の量がインフルエンザ群の2.7倍であり(1視野当たりの新生血管数:60.7±11.8 vs.22.5±6.9)、非感染対照群(2.1±0.6)と比べても密度が高かった(p<0.001)。発芽型血管新生の量も、インフルエンザ群に比べCOVID-19群で多かった。

 COVID-19群では、重積型血管新生による新生血管の量は、入院期間が長くなるに従って増加した(p<0.001)のに対し、インフルエンザ群では経時的な重積型血管新生の増加が少ないか、まったく増加しなかった。同様のパターンが、発芽型血管新生でも認められた。

 323個の遺伝子に関して血管新生関連遺伝子発現の多重解析を行ったところ、69個の血管新生関連遺伝子はCOVID-19群の肺にのみ発現し、26個の遺伝子はインフルエンザ群の肺にのみ発現しており、45個の遺伝子は両群で共通に発現していた。

 著者は、「内皮細胞内のSARS-CoV-2の存在は、内皮傷害には血管周囲の炎症だけでなくウイルスの直接的な作用の関与が示唆される」と指摘し、「これらの知見の普遍性と臨床的意義を明らかにするには、さらなる研究を要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 山口 佳寿博( やまぐち かずひろ ) 氏

東京医科大学 呼吸器内科 客員教授

健康医学会附属 東都クリニック