中等~重症ARDSへのIFNβ-1aは?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/03/11

 

 中等症~重症の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の治療において、インターフェロン(IFN)β-1aの6日間静脈内投与はプラセボと比較して、死亡と人工呼吸器非装着日数を合わせた複合スコアを改善しないことが、イタリア・ボローニャ大学のV Marco Ranieri氏らによる「INTEREST試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年2月25日号に掲載された。ARDSの基盤となる主要な病態生理学的イベントは制御不能な炎症反応であり、その結果として、肺における血管漏出(vascular leakage)の増加に伴って肺胞-毛細血管関門の上皮と内皮の損傷がもたらされる。一方、上皮と内皮の細胞に発現しているCD73は、アデノシン産生を調節する酵素であり、IFNβ-1aはCD73をアップレギュレートすることで血管漏出を防止し、白血球動員を抑制するという。

死亡と非装着日数の複合をプラセボと比較する無作為化試験

 本研究は、欧州8ヵ国の74の集中治療室(ICU)が参加した二重盲検無作為化試験であり、2015年12月~2017年12月の期間に患者登録が行われた(Faron Pharmaceuticalsなどの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、ベルリン定義で中等症~重症のARDSで、24時間以内に動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FiO2)などのARDS判定基準を満たし、診断から48時間以内に試験薬の初回投与が可能な患者であった。

 被験者は、1日1回、IFNβ-1a(10μg)またはプラセボを静脈内投与する群に無作為に割り付けられ、6日間の治療を受けた。

 主要評価項目は、28日時の生存と人工呼吸器非装着日数の複合エンドポイントとした。28日以内の死亡を-1点とし、28日時の生存例を0点(第28日も人工呼吸器を装着)から27点(第1日に人工呼吸器から離脱)でスコア化した。

28日死亡率、人工呼吸器非装着日数にも差はない

 301例(平均年齢58歳、女性34.2%)が無作為割り付けの対象となった。296例(98.3%)が試験を完遂し、主解析の対象とされた(IFNβ-1a群144例、プラセボ群152例)。

 28日複合スコア中央値は、IFNβ-1a群が10日(IQR:-1~20)、プラセボ群は8.5日(0~20)であり、両群間に有意な差は認められなかった(絶対群間差:0日、95%信頼区間[CI]:-1~1、p=0.82)。

 28日死亡率(IFNβ-1a群26.4% vs.プラセボ群23.0%、絶対群間差:3.4%、95%CI:-8.1~14.8%、p=0.53)、28日ICU内死亡率(25.7% vs.23.0%、2.7%、-8.8~14.1、p=0.62)、28日ICU外院内死亡率(0.9% vs.0%、0.9%、-10.7~12.1、p=0.37)、90日死亡率(32.6% vs.31.6%、1.0%、-10.4~12.5、p=0.86)、人工呼吸器非装着日数中央値(10日[IQR:0~20]vs.8.5日[0~20]、絶対群間差:0日[95%CI:0~1]、p=0.47)、ICU治療なしの生存日数中央値(6日[0~16]vs.3.5日[0~15]、0日[0~0]、p=0.34)などにも、差はみられなかった。

 試験期間中に、74例(25.0%)が治療関連有害事象を経験した(IFNβ-1a群41例[28.5%]vs.プラセボ群33例[21.7%])。最も頻度の高い治療関連有害事象は、IFNβ-1a群が発熱(13例[9.0%])および横紋筋融解症(5例[3.5%])であり、プラセボ群は発熱(5例[3.3%])およびトランスアミナーゼ上昇(6例[3.9%])であった。

 著者は、「これらの知見は、中等症~重症ARDS患者の管理におけるIFNβ-1aの使用を支持しない」としている。

(医学ライター 菅野 守)