NASHに有効? resmetiromが肝脂肪量を減少/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/11/27

 

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療において、resmetirom(MGL-3196)はプラセボに比べ、肝臓の脂肪量を相対的に減少させることが、米国・Pinnacle Clinical ResearchのStephen A. Harrison氏らが行ったMGL-3196-05試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年11月11日号に掲載された。NASHは、肝臓の脂肪化、炎症、肝細胞障害、進行性の肝線維化で特徴付けられる。resmetiromは、肝臓に直接作用し、経口投与で活性化する甲状腺ホルモン受容体β活性化薬であり、肝臓の脂肪代謝を促進し、脂肪毒性を低減することでNASHが改善するよう設計されているという。

resmetiromによる肝脂肪量の低下効果を評価する無作為化第II相試験

 本研究は、resmetiromによる肝脂肪量の低下効果を評価する36週の二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、2016年10月19日~2017年7月28日の期間に、米国の18施設で患者の割付が行われた(Madrigal Pharmaceuticalsの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、生検でNASH(線維化:stage 1~3)が確認され、MRIプロトン密度脂肪画分測定法(MRI-PDFF)で、肝臓に10%以上の脂肪化を認めた患者であった。

 被験者は、resmetirom(80mg)またはプラセボを1日1回経口投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。12週と36週時に肝臓の脂肪の測定が行われ、36週時には2回目の肝生検が実施された。

 主要エンドポイントは、ベースラインと12週時にMRI-PDFFを受けた患者におけるMRI-PDFFで評価した肝臓の脂肪量の相対的な変化とした。

resmetirom群は36週時の肝脂肪量、脂質、肝酵素、種々のマーカーも改善

 125例が登録され、resmetirom群に84例(平均年齢51.8[SD 10.4]歳)、プラセボ群には41例(47.3[11.7])が割り付けられた。12週時のMRI-PDFFは、resmetirom群が78例、プラセボ群は38例で行われ、36週時の肝生検はそれぞれ74例および34例で実施された。

 ベースラインの人口統計学的因子は両群間で類似していたが、resmetirom群で女性(resmetirom群55%、プラセボ群41%)と糖尿病(43%、32%)の割合が高かった。平均BMIはresmetirom群が35.8(SD 6.2)、プラセボ群は33.6(5.8)で、全体の79%が30以上であった。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)活動性スコア(NAS)の平均は、それぞれ4.9および4.8で、全体の45%が線維化stage 2/3だった。

 ベースラインと比較して、12週時の相対的な肝脂肪量は、resmetirom群(78例)で32.9%減少し、プラセボ群(38例)の10.4%の減少に比べ、有意な低下効果が認められた(最小二乗平均差:-22.5%、95%信頼区間[CI]:-32.9~-12.2、p<0.0001)。また、36週時の相対的肝脂肪量も、resmetirom群(74例)では37.3%低下しており、プラセボ群(34例)の8.9%低下に比し、有意な低下効果が確認された(-28.4%、-41.3~-15.4、p<0.0001)。

 肝臓の脂肪量が相対的に30%以上減少した患者の割合は、12週時がresmetirom群60.3%、プラセボ群は18.4%(p<0.0001)、36週時はそれぞれ67.6%、29.4%(p=0.0006)であり、いずれもresmetirom群で高かった。

 また、resmetirom群はプラセボ群に比べ、LDLコレステロール(LDL-C、p<0.0001)、リポ蛋白(a)(ベースライン時に>10nmol/Lの患者、p=0.0009)、アポリポ蛋白B(ベースライン時にLDL-C≧100mg/dLの患者、p<0.0001)、トリグリセライド(p<0.0001)、アポリポ蛋白CIII(p<0.0001)が、いずれも有意に低下した。

 アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)、ベースライン時にALTが上昇していた患者(男性>45 IU/L、女性>30 IU/L)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は、いずれも12週時には有意な変化を認めなかったが、36週時にはすべてresmetirom群で有意に低下した(それぞれ、p=0.0019、p=0.0035、p=0.0016)。

 線維化のマーカーである強化肝線維症(enhanced liver fibrosis)(p=0.017)とN末端III型コラーゲンプロペプチド(PRO-C3)(p=0.0027)は、12週および36週時にresmetirom群で有意に低下した。肝細胞アポトーシスのマーカーであるサイトケラチン-18は、36週時には有意に低下し(p=0.0035)、肝臓の健全性と関連するアディポネクチンは上昇(p=0.0003)、肝臓の炎症のマーカーである逆位トリヨードサイロニンは低下した(p<0.0001)。

 治療関連有害事象は、resmetirom群が86.9%、プラセボ群は68%で認められたが、多くは軽度~中等度であった。薬剤関連の重篤な有害事象はみられなかった。resmetirom群で最も頻度の高い有害事象は下痢(ベースライン~12週時:33%、12~36週時:4%)および悪心(14%、6%)であった。

 著者は、「これらの知見は、現在進行中のstage F2~F3の線維症を有するNASH患者を対象とした第III相試験(MAESTRO-NASH試験)に、理論的根拠をもたらした」としている。

(医学ライター 菅野 守)