元プロサッカー選手、神経変性疾患死3.45倍/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2019/10/31

 

 元プロサッカー選手は、神経変性疾患による死亡率が高く、一般的な疾患での死亡率は低いことが示された。英国・グラスゴー大学のDaniel F. Mackay氏らによる、スコットランドの元プロサッカー選手7,676例を対象とした後ろ向き適合コホート研究の結果で、元選手は認知症関連治療薬の処方率も高かったという。神経変性疾患は、コンタクトスポーツのエリート選手で報告されている。元プロサッカー選手の神経変性疾患の発症率については明らかにされていなかった。著者は、「今回観察された結果について、前向き適合コホート研究を行い確認する必要がある」と述べている。NEJM誌オンライン版2019年10月21日号掲載の報告。

スコットランドの元プロサッカー選手と適合コホートを比較分析
 研究グループは、スコットランドの選手データベースから、元プロサッカー選手7,676例と、性別、年齢、社会的剥奪(social deprivation)の程度で適合した一般住民の対照コホート2万3,028例について、後ろ向きコホート研究を行い、神経変性疾患死亡率を比較した。
 死因については、死亡診断書で特定した。また、認知症治療薬の処方データについても比較した。処方情報は、全国処方情報システムから入手した。

アルツハイマー病死のリスクが最も高く5.07倍
 中央値18年以上の追跡において、元サッカー選手群では1,180例(15.4%)が、対照群では3,807例(16.5%)が死亡した。全死因死亡率は、70歳までは元サッカー選手群が対照群よりも低かったが、その後は逆に高かった。

 虚血性心疾患による死亡リスクは、元サッカー選手群が対照群に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.66~0.97、p=0.02)。また、肺がんによる死亡リスクも、元サッカー選手群で有意に低かった(同:0.53、0.40~0.70、p<0.001)。

 一方で神経変性疾患による死亡率は、元サッカー選手群1.7%、対照群0.5%で有意に高率だった(虚血性心疾患死・全がん死の競合リスク補正後HR:3.45、95%CI:2.11~5.62、p<0.001)。元サッカー選手において、死亡診断書で神経変性疾患が死因・要因と記述されていた死亡は、疾患のサブタイプによってばらつきがあった。最も頻度が高かったのはアルツハイマー病で(元サッカー選手群vs.対照群のHR:5.07、95%CI:2.92~8.82、p<0.001)、最も低かったのはパーキンソン病だった(2.15、1.17~3.96、p=0.01)。

 認知症関連治療薬の処方率も、元サッカー選手群が対照群に比べ有意に高率だった(オッズ比[OR]:4.90、95%CI:3.81~6.31、p<0.001)。

 元サッカー選手の中で、神経変性疾患が死因・要因の割合は、元ゴールキーパーと元フィールド・プレーヤーで有意差はなかった(HR:0.73、95%CI:0.43~1.24、p=0.24)。
しかし、認知症関連治療薬の処方率は、元ゴールキーパーが元フィールド・プレーヤーより有意に低率だった(OR:0.41、95%CI:0.19~0.89、p=0.02)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

上智大学

大正大学

J-CLEAR評議員