入浴中の死亡、年間で最もハイリスクな日は?

提供元:ケアネット

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公開日:2026/02/13

 

 日本は世界的にみて高齢者の溺死率がきわめて高く、その主な要因は家庭での入浴習慣にある。とくに入浴中の死亡は冬場にピークを迎えるが、全国規模での外気温の影響や、特定の「ハイリスク日」については十分に検討されていなかった。奈良県立医科大学の田井 義彬氏らの研究グループは、全国の26年間のデータを解析した結果、浴槽内溺死リスクの季節性の影響のうち約80%が外気温の影響であり、元日や大晦日にとくにリスクが上昇することを明らかにした。Environmental Health and Preventive Medicine誌2025年号に掲載。

 本研究では、1995〜2020年の死亡診断書に基づく住宅での浴槽内溺死データ(ICD-10コードW65)9万9,930件を用いて、全国47都道府県を対象とした時系列解析を実施した。季節性と外気温の寄与分画(AF)の推定には、1年周期の変動を制御するスプライン回帰と、気温の遅延効果を考慮した分布ラグ非線形モデル(DLNM)を組み合わせた手法を用いた。また、特定日のリスク評価には準ポアソン回帰分析を、2060年代までの将来予測には人口動態および気候変動シナリオ(SSP)を統合した予測モデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・浴槽内溺死は顕著な季節性を示し、リスクが最小となる8月(219日目)に対し、ピークである1月上旬(9日目)のリスクは9.26倍(95%信頼区間[CI]:8.42~10.19)であった。
・溺死リスクの季節性AFは77.8%であったが、外気温の影響を調整すると15.3%まで減少した。これは、外気温が季節性AFの80.3%を占めていることを示している。
・外気温の中央値16.2℃と比較して、浴槽内溺死の相対リスク(RR)は、0℃で2.40(95%CI:2.15~2.69)、30℃で0.23(95%CI:0.19~0.27)であり、低温ほどリスクが増大した。
・季節性と気温の調整後、平日と比較して、浴槽内溺死のRRは、祝日で1.12(95%CI:1.08~1.16)と有意に高く、とくに元日(RR:1.72、95%CI:1.61~1.84)と大晦日(RR:1.63、95%CI:1.52~1.74)で突出していた。
・日曜日は平日(金曜日)と比較して、RR:1.16(95%CI:1.12~1.20)であった。
・将来予測では、人口減少に伴い浴槽内溺死の総死亡者数は2040年代から減少に転じるが、高齢化の影響により、温暖化が進んでも人口当たりの浴槽内溺死率は、2060年代まで2020年代と同等以上の高水準が維持されると予測された。

 著者らは、日曜日や祝日にリスクが高まる要因として、入浴介助サービスの休止や、正月期間中の飲酒習慣、医療機関への受診の遅れなどが関連している可能性を指摘している。また、外気温そのものは制御できないが、脱衣所や浴室の暖房による室内温度の管理や、個人の寒冷曝露を避ける対策を講じることで、入浴関連死を予防できる可能性があると結論付けている。

(ケアネット 古賀 公子)