初期研修医の労働時間、大幅減でもアウトカムに関連せず/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/19

 

 米国の卒後医学教育認定評議会(Accreditation Council for Graduate Medical Education:ACGME)は2003年、初期研修医の労働時間を改正した。それまでは週80時間以上、交替勤務の拘束時間は30時間以上が慣習化されていたが、週の労働時間の上限を80時間とし、交替勤務の上限は24時間(患者ケアの引き継ぎ時間は含まない)、当直勤務は3日ごと、28日間に休日4日(平均7日に1日)の義務化が課せられた。この改正の影響について、米国・ハーバード大学医学大学院のAnupam B. Jena氏らが改正前後の入院患者の30日死亡率、30日再入院率および入院費について調べた結果、初期研修期間の労働時間の大幅な削減は、医師訓練の質の低下とは関連していなかったという。BMJ誌2019年7月10日号掲載の報告。

入院患者約49万例で、初期研修の労働時間改正前後のアウトカムを比較
 研究グループは2000~12年の期間に、入院して一般内科医の治療を受けた65歳以上のメディケア受給者から無作為抽出(20%)した48万5,685例を対象として後ろ向き観察研究を行った。

 30日死亡率、30日再入院率、入院患者のメディケア・パートB入院費用について、2003年のACGME労働時間改正後に研修を始めた1年目の内科医(2006年以降に初期研修を修了)が治療した患者と、改正前または初期研修期間の一部が改正後の1年目の内科医(2006年以前に初期研修を修了)が治療した患者とで比較した。また、入院医療の一般的な傾向に関して、この改正に関係しない上級内科医(10年目の内科医)が治療した患者を対照群として評価に加えた。統計解析には差分の差分(difference-in-differences)法を用いた。

30日死亡率、30日再入院率、入院費に有意差なし
 30日死亡率、30日再入院率および入院費用に関して、初期研修期間の労働時間改正による統計学的に有意な差は認められなかった。

 1年目の内科医が治療した患者の30日死亡率は、2000~06年および2007~12年の期間でそれぞれ10.6%(1万2,567/11万8,014例)および9.6%(1万3,521例/14万529例)、10年目の内科医が治療した患者ではそれぞれ11.2%(1万1,018/9万8,811例)および10.6%(1万3,602/12万8,331例)であり、補正後差分の差分効果は-0.1ポイントであった(95%信頼区間[CI]:-0.8~0.6、p=0.68)。

 同様に1年目の内科医が治療した患者の30日再入院率は、それぞれ20.4%(2万4,074/11万8,014例)および20.4%(2万8,689/14万529例)、10年目の内科医が治療した患者では、それぞれ20.1%(1万9,840/9万8,811例)および20.5%(2万6,277/12万8,331例)で、補正後差分の差分効果は0.1ポイント(-0.9~1.1、p=0.87)であった。

 1年目の内科医が治療した患者のメディケア・パートB入院費用は、それぞれ1,161ドルおよび1,267ドル、10年目の内科医が治療した患者では1,331ドルおよび1,599ドルで、補正後差分の差分効果は-46ドル(95%CI:-94~2、p=0.06)であった。

 なお、著者は研究の限界として、解析対象が入院患者のみに限定されていること、2011年のACGMEの再改正後に初期研修を修了した医師のデータが活用できていないこと、外科領域については解析していないことなどを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)