中間~高リスク前立腺がんの放射線治療、超寡分割照射は有効か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/01

 

 中間~高リスクの前立腺がんの治療において、超寡分割放射線治療は通常分割放射線治療に対し、治療奏効維持生存(failure-free survival:FFS)率に関して非劣性であり、早期の副作用の頻度は高いものの晩期の副作用の割合は同等であることが、スウェーデン・ウメオ大学のAnders Widmark氏らが行ったHYPO-RT-PC試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年6月18日号に掲載された。中程度寡分割照射は、従来の通常分割照射に比べ臨床アウトカムが良好であることが示されているが、超寡分割照射に関する無作為化試験の報告はなかったという。

北欧の12施設が参加した超寡分割照射の無作為化非劣性試験
 HYPO-RT-PC試験は、超寡分割照射の通常分割照射に対する非劣性を検証する第III相非盲検無作為化試験であり、2005年7月~2015年11月の期間にスウェーデンとデンマークの12施設で患者登録が行われた(Nordic Cancer Unionなどの助成による)。

 対象は、年齢75歳までの男性で、中間~高リスクの前立腺がんを有し、全身状態(WHO PS)が0~2の患者であった。被験者は、超寡分割照射(総線量42.7Gy、7分割、3日/週、2.5週)または通常分割照射(78.0Gy、39分割、5日/週、8週)を施行する群に無作為に割り付けられた。アンドロゲン遮断療法は許容されなかった。

 主要評価項目は、per-protocol集団におけるFFS(無作為化から生化学的または臨床的な治療不成功までの期間)とした。事前に規定された非劣性マージンは5年時に4%とし、ハザード比(HR)の限界値は1.338であった。担当医による毒性の評価は、米国腫瘍放射線治療グループ(Radiation Therapy Oncology Group:RTOG)の合併症スケールに準拠し、患者報告アウトカムの評価には、前立腺がん症状スケール(PCSS)質問票を用いた。

超寡分割照射群は急性期合併症が多いが、1年時を除きほかは同等
 1,200例が登録され、超寡分割照射群に598例、通常分割照射群には602例が割り付けられた。このうち1,180例がper-protocol集団で、超寡分割照射群が589例(年齢中央値68歳[IQR:64~72]、PSA中央値8.7ng/mL[6.0~12.2])、通常分割照射群は591例(69歳[65~72]、8.6ng/mL[5.7~12.0])であった。全体の89%が中間リスク例であり、高リスク例は11%と少なかった。フォローアップ期間中央値は5.0年(IQR:3.1~7.0)だった。

 5年時のFFS率は、両群とも84%(95%信頼区間[CI]:80~87)で、補正後HRは1.002(0.758~1.325、log-rank検定のp=0.99)であり、超寡分割照射群は通常分割照射群に対し非劣性であった。

 5年全生存率は、超寡分割照射群が94%、通常分割照射群は96%と、両群間に有意な差は認めなかった(HR:1.11、95%CI:0.73~1.69)。前立腺がんによる死亡率は、それぞれ2%、<1%であった(Gray検定のp=0.46)。

 放射線治療終了時の担当医報告によるRTOG Grade2以上の尿路の急性期毒性の割合は、超寡分割照射群のほうが高い傾向が認められた(28%[158/569例]vs.23%[132/578例]、p=0.057)。

 放射線治療終了後10年間のGrade2以上の尿路または腸管の晩期毒性は、1年時の尿路毒性の割合が超寡分割照射群で高かったこと(6%[32/528例]vs.2%[13/529例]、p=0.0037)を除き、両群間に差はなかった。

 放射線治療終了後5年時のRTOG Grade2以上の尿路毒性(超寡分割照射群5%[11/243例]vs.通常分割照射群5%[12/249例]、p=1.00)および腸管毒性(1%[3/244例]vs.4%[9/249例]、p=0.14)に差はみられなかった。

 患者報告アウトカムは、放射線治療終了時の急性期では、尿路(p=0.0066)および腸管(排便)(p<0.0001)とも超寡分割照射群で有意に不良であったが、晩期症状は、1年時の尿路毒性が超寡分割照射群で高かったこと(p=0.0036、担当医判定と一致)を除き、有意な差はなかった。

 全体の勃起機能の保持は、治療開始時の約70%から5年時には約35%に低下したが、両群の比較では、担当医判定および患者報告のいずれにおいても、治療終了時から終了後10年間で差は認めなかった。

 著者は、「この結果は、前立腺がんにおける超寡分割照射の使用を支持する。高リスク例が少なかったことから、この集団での超寡分割照射の検討を新たに行う必要がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 宮嶋 哲( みやじま あきら ) 氏

東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学 主任教授