職場の健康プログラム、社員の健康や医療費減に効果なし?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/04/25

 

 職場における栄養・運動指導といった健康プログラムは、定期的な運動や体重管理を促す効果はあるものの、血圧やコレステロールなどの検査測定値や医療費の削減には効果がないことが示された。米国・ハーバード・メディカル・スクールのZirui Song氏らが、米国内160ヵ所の職場を対象に、クラスター無作為化比較試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2019年4月16日号で発表した。企業は、社員の健康改善や医療費削減のために職場健康プログラムへの投資を増やしているが、それらプログラムの効果に関する実証エビデンスはほとんどないという。

栄養摂取や運動、ストレス解消について8回講義
 研究グループは、2015年1月~2016年6月にかけて米国内160ヵ所の職場を対象に試験を行った。2016年6月30日までの医療費請求データと雇用データを集め、2016年7月1日~8月31日に質問票や検査測定値を収集した。

 試験対象の職場から無作為に20ヵ所(4,037例)を抽出して介入群とし、各職場の登録栄養士が、栄養摂取、身体活動、ストレス解消やその他の関連するトピックスについて8回の講義を行った。残りの140ヵ所の職場は対照群とし、何も行わなかった。

 評価は、4領域について行った。(1)自己申告による健康・行動に関するサーベイ(29アウトカム)および、(2)スクリーニングによる臨床検査測定値(10アウトカム)の2領域については、介入群20ヵ所と対照群から無作為に抽出した対照群主要20ヵ所について比較した。(3)医療費と医療サービス利用状況(38アウトカム)および、(4)欠勤率、就労期間、パフォーマンス評価(就労成果)などの雇用アウトカム(3アウトカム)については、介入群20ヵ所と対照群140ヵ所を比較した。

欠勤率や仕事のパフォーマンスにも効果なし
 総被験者数は3万2,974例で、平均年齢38.6歳、女性45.9%だった。サーベイとスクリーニングへの参加率は、介入群がそれぞれ36.2%、44.6%、対照群主要20ヵ所は34.4%、43.0%だった。

 18ヵ月時点で、自己申告による健康関連アウトカムのうち、定期的に運動を行っている、と回答した割合は、対照群61.9%に対し、介入群は69.8%と有意に高率だった(補正後群間差:8.3ポイント、95%信頼区間[CI]:3.9~12.8、p=0.03)。積極的に体重管理を行っている割合も、対照群54.7%に対し、介入群が69.2%と高率だった(同:13.6ポイント、7.1~20.2、p=0.02)。

 しかし、そのほかの、自己申告による健康・行動に関する27項目(自己申告の健康、睡眠の質、食物選択など)、臨床検査測定値10項目(コレステロール、血圧、BMIなど)、医療・薬剤費や医療サービス利用状況の38項目、雇用アウトカム3項目(欠勤率、就労期間、就労成果)についてはいずれも、介入による有意な効果は認められなかった。

 著者は、「データが不完全なアウトカムがあり限定的ではあるが、今回の結果は、短期的な健康プログラムが提供できる費用対効果の予測を加減することになるだろう」とまとめている。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)