ニボルマブ、転移・再発NSCLCの1次治療で予後改善せず/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2017/07/05

 

 未治療のStage IVおよび再発の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、抗PD-1抗体製剤ニボルマブは標準的な化学療法と比較して予後を改善しないことが、米国・オハイオ州立大学総合がんセンターのDavid P. Carbone氏らが行ったCheckMate 026試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年6月22日号に掲載された。ニボルマブは、既治療の転移のあるNSCLCの2つの第III相試験でドセタキセルよりも全生存(OS)期間が優れ、未治療のNSCLCの第I相試験では持続的奏効や良好な安全性プロファイルが報告されている。一方、PD-L1を超えるバイオマーカーの探索が進んでおり、腫瘍の遺伝子変異負荷(tumor-mutation burden:TMB)が高度な患者は、免疫療法からベネフィットを得る可能性が高いことが示唆されている。

541例で有用性を直接比較する無作為化試験
 本研究は、Stage IV・再発NSCLCの1次治療におけるニボルマブの安全性と有効性を評価する国際的な非盲検無作為化第III相試験である(Bristol-Myers Squibb社などの助成による)。

 対象は、組織学的に扁平上皮がんまたは非扁平上皮がんが確認されたStage IV・再発NSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0/1、登録前6ヵ月以内の生検で採取された検体のPD-L1発現が、中央判定で1%以上の患者であった。

 被験者は、ニボルマブ3mg/kgを2週ごとに静脈内投与する群または担当医が選択したプラチナ製剤ベースの2剤併用化学療法を3週ごとに4~6サイクル施行する群に、1対1の割合でランダムに割り付けられた。化学療法群の患者は、病勢進行後、ニボルマブへのクロスオーバーが可能とされた。

 主要評価項目はPD-L1の発現が≧5%の患者における無増悪生存(PFS)とし、評価は独立審査委員会によって盲検下の中央判定で行われた。また、探索的検討として、TMB別の有効性の解析も行った(全エクソームシーケンスで検出された腫瘍の体細胞ミスセンス変異数が0~99個の場合を低TMB、100~242個を中TMB、243個以上を高TMBと定義)。

 2014年3月~2015年4月に1,325例が登録され、541例(41%)がランダム化の対象となった。ニボルマブ群に271例が、化学療法群には270例が割り付けられた。実際に治療を受けたのは530例(98%)だった。ベースラインの全体の年齢中央値は64歳(範囲:29~89歳)、女性が39%であった。Stage IVが92%、再発は8%だった。

PFS期間中央値、ニボルマブ群4.2ヵ月、化学療法群5.9ヵ月
  PD-L1≧5%の423例(ニボルマブ群:211例、化学療法群:212例)の解析では、PFS期間中央値はニボルマブ群が4.2ヵ月と、化学療法群の5.9ヵ月に比べむしろ短かった(ハザード比[HR]:1.15、95%信頼区間[CI]:0.91~1.45、p=0.25)。1年PFS率は、それぞれ24%、23%であった。

 PD-L1≧5%の患者のOS期間中央値にも、有意な差は認めなかった(14.4 vs. 13.2ヵ月、HR:1.02、95%CI:0.80~1.30)。1年OS率は、それぞれ56%、54%だった。なお、化学療法群212例のうち128例(60%)が、後治療としてニボルマブの投与を受けていた。

 PD-L1≧5%の患者の最良総合効果は、ニボルマブ群が26%(完全奏効[CR]:4例、部分奏効[PR]:51例)、化学療法群は33%(1例、70例)であった。奏効までの期間中央値は両群でほぼ同様であった(2.8 vs. 2.6ヵ月)のに対し、奏効期間中央値はニボルマブ群が2倍以上長かった(12.1 vs. 5.7ヵ月)。

 TMB別の探索的解析では、高TMB例においてニボルマブ群が化学療法群に比べ奏効率(47 vs. 28%)、PFS期間中央値(9.7 vs. 5.8ヵ月)が良好であった。しかし、OS期間に差は認めなかった。

 治療関連有害事象は、ニボルマブ群が71%、化学療法群は92%に発現した。このうちGrade 3/4は、それぞれ18%、51%であった。ニボルマブ群で最も頻度の高い有害事象は疲労(21%)であり、次いで下痢(14%)、食欲減退(12%)、悪心(12%)、皮疹(10%)の順であり、皮疹は免疫学的原因による可能性が示唆された。

 著者は、「化学療法群は、患者の多くがニボルマブによる後治療を受け、ベースラインの背景因子のうちいくつかが良好な予後と関連した可能性が高い(わずかだが肝転移例が少なく、標的病変径和が小さく、女性が多い)が、ニボルマブ群は、ニボルマブ治療で予後が良好となる可能性が高い因子(PD-L1≧50%、高TMB)を持つ患者が少なかったことが、これらの結果に影響を及ぼした可能性がある」と考察している。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 倉原 優( くらはら ゆう ) 氏

近畿中央呼吸器センター

2006年滋賀医大卒業。洛和会音羽病院を経て08年から現職。
自身のブログ「呼吸器内科医」では医学論文の和訳や医療エッセーを執筆。