近隣の歩行環境が良いと肥満・糖尿病のリスクが低下/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/06/06

 

 歩行環境に恵まれている都市近郊住民ほど過体重や肥満になる割合が低く、糖尿病の発症率も低いことが明らかにされた。カナダ・St Michael's HospitalのMaria I. Creatore氏らが2001~12年のオンタリオ州南部の都市住民データを分析した結果で、JAMA誌2016年5月24・31日号で発表した。肥満および糖尿病の罹患率はここ10年で大きく上昇しているが、その傾向に歯止めをかける環境的要因の役割については明らかにされていない。著者らは、都市近郊の歩行環境が良好な住区では不良な住区と比べて、過体重、肥満、糖尿病の増大が緩やかであるかどうかを調べた。

歩行環境指標で住区を5分類、過体重・肥満・糖尿病の有病率を比較
 検討は、オンタリオ州南部の都市成人(30~64歳)に関する地方都市ヘルスケア年報(300万人/年)と、隔年Canadian Community Health Survey(5,500人/サーベイ)のデータ(2001~12年)を時系列分析して行われた。

 範囲0~100の標準化スコアで、スコア高値ほど近隣歩行環境が良好であることを示す指標を用いて、都市近隣住区を最低位(第1五分位)群~最高位(第5五分位)群に分類して評価した。

 主要評価項目は、過体重、肥満、糖尿病の年間有病率で、年齢、性別、住区の所得状況、民族性で補正した。

 分析には、8,777例の都市近隣住区が含まれた。歩行環境指標の中央値は16.8で、第1五分位群は10.1、第5五分位群は35.2であった。住民特性は類似していたが、貧困度は、歩行環境指標が高値群のほうが低値群と比べて高かった。

歩行環境指標が高い住区の有病率は有意に低い
 2001年において、過体重/肥満の補正後有病率は、第5五分位群が第1五分位群と比べて有意に低く(43.3% vs.53.5%、p<0.001)、また2001年から2012年の間に、有病率は歩行環境不良住区では有意な上昇がみられた(絶対変化:第1五分位群5.4%、第2五分位群6.7%、第3五分位群9.2%)。一方、歩行環境指標が高い住区では過体重/肥満の有病率の有意な変化はみられなかった(同:第4五分位群2.8%、第5五分位群2.1%)。

 2001年において、糖尿病の補正後有病率は、第5五分位群がその他の群と比べて有意に低かった。また、同有病率は、第5五分位群では1,000人当たり2001年7.7から2012年に6.2へと低下し(絶対変化:-1.5、95%信頼区間[CI]:-2.6~-0.4)、第4五分位群でも同8.7から7.6へ低下していた(同:-1.1、-2.2~-0.05)。対照的に、歩行環境不良住区では有意な変化がみられなかった(同:第1五分位群-0.65、第2五分位群-0.5、第3五分位群-0.9)。

 いずれの評価時点でも、第1五分位群と比べて第5五分位群のほうが、徒歩、自転車利用、公共交通機関の利用率が有意に高く、車の利用率は有意に低かった。ただし、歩行環境が良好な住区でも、2001年と比べて2011年における日々の歩行や自転車利用の頻度は、わずかな増大にとどまっている。余暇の身体活動度、食事、喫煙パターンについては、歩行環境による違いはみられず(各アウトカムの第1五分位vs.第5五分位のp>0.05)、安定的に推移していた。

 なお今回の結果について著者は、生態学的要因や、より歩行環境に優れた都市住区デザインと身体活動度増大との関連についてのエビデンスは不足しており、さらなる研究を行い、観察された関連が普遍的なものかを評価する必要があると指摘している。