論文査読、重大な欠陥の見落とし多数/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2014/07/18

 

 医学論文の査読において査読者が、無作為化試験の方法や結果の報告に関する重要な欠陥を見落とす場合が多いことが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のSally Hopewell氏らが、93本の無作為化試験を後ろ向きに検討して明らかにした。査読者が、試験の方法や結果に関する記述について、変更要請をすることは比較的少ないこと、査読者による指摘の多くは論文の改善につながっていたが、なかには不適当であったり、指摘による追記がネガティブな影響を有することになる場合も判明したという。査読は広く行われているが、発表論文の質に与えるインパクトについては不明だった。BMJ誌オンライン版2014年7月1日号掲載の報告より。

査読による試験方法の記述への変更を主要評価項目に検討
 検討は、BioMed Centralシリーズの医学雑誌で、2012年に発表された93本の無作為化試験を対象に行われた。

 主要評価項目は、CONSORTチェックリストに基づく査読後、試験の方法に関する記述にどのような変更が加えられたのか、要請がなされた変更点の種類、また著者が変更要請に応じた程度だった。

査読後の報告書の多くで、無作為化手順の説明や盲検性の記述が不十分
 結果、93本の試験報告書のうち、無作為化手順の説明がなかったのは38%(35件)、割り付け手順の隠ぺいについて記述がなかったのは54%(50件)、試験の盲検性が不明だったのは50%(46件)だった。そのほかに記述が不十分だった項目は、被験者サイズに関する計算方法が34%(32件)、主要・副次評価項目の詳細が35%(33件)、主要評価項目の結果が55%(51件)、試験プロトコルの詳細が90%(84件)だった。

 それを踏まえて原稿が修正された回数は相対的に少なく、また、修正がなされた場合もほとんどは新たな情報を加えることや既存情報の手直しだった。

 査読者による変更要請の多くは、報告原稿の最終版に良い影響を与えていた。たとえば、無作為化と盲検化について(27件)、被験者サイズについて(15件)、主要・副次アウトカムについて(16件)、主要・副次アウトカムが与えた効果(14件)、試験結果を受けた結論のトーンダウン(27件)などにみられた。

 一方で、試験計画時に含まれていなかった追加分析を追記すること(15件)のような、ネガティブな影響を与える査読者の指摘もあった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員