抗血小板薬の診断時と周術期の2回に分ける分割投与/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2013/09/11

 

 待機的経皮冠動脈インターベンション(PCI)を受ける非ST上昇型(NSTE)急性冠症候群患者へのプラスグレル(本邦では承認申請中)投与について、診断時に投与する前治療の有意な有効性、安全性は認められなかったことが、フランス・ピティエ-サルペトリエール病院のGilles Montalescot氏らによるACCOAST試験の結果、示された。P2Y12受容体阻害薬プラスグレルは、第三世代の新規抗血小板薬で、NSTE急性冠症候群患者への有効性が示されている。しかし、投与のタイミングによる影響は不明であった。著者は、今回の結果は、プラスグレルの治療戦略は冠血管造影後とすることを支持するものであったと結論している。NEJM誌オンライン版2013年9月1日号掲載の報告より。

診断時投与と冠血管造影後投与の有効性を比較
 ACCOAST試験は、待機的PCIを要する患者へのプラスグレル投与について、診断時投与と冠血管造影後投与の有効性を比較することを目的とした無作為化二重盲検試験であった。

 試験には、トロポニン陽性を示し、無作為化後2~48時間以内に冠動脈造影が予定されていたNSTE急性冠症候群患者4,033例が登録された。被験者は、2,037例がプラスグレル前治療群(負荷量30mg)に、1,996例がプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。前治療群は、PCI時にプラスグレル30mgが追加投与され、プラセボ群にはPCI時にプラスグレル60mgが投与された。

前治療は30日間の重大虚血性イベントを減少しない
 結果、有効性についての主要複合エンドポイント(無作為化後7日間の、心血管系の原因による死亡・心筋梗塞・脳卒中・緊急血行再建術・GP IIb/IIIa阻害薬の緊急投与の必要性の複合)の発生は、両群間で有意差はみられなかった(前治療に対するハザード比:1.02、95%信頼区間[CI]:0.84~1.25、p=0.81)。

 安全性についてのキーエンドポイント(無作為化後7日間の、冠動脈バイパス術[CABG]関連あり・なしにかかわらないあらゆるTIMI重大出血エピソード)の発生は、前治療群で有意に増大した(ハザード比:1.90、95%CI:1.19~3.02、p=0.006)。個別にみると、非CABG関連のTIMI重大出血は3倍(同:2.95、1.39~6.28、p=0.003)、非CABG関連の命に関わる出血は6倍(同:5.56、1.63~19.0、p=0.002)の増大であった。

 前治療について、PCIを受けた患者のみの解析においても(PCI施行率68.7%、前治療後中央値4.3時間)、7日時点の主要アウトカムは減少せず、TIMI重大出血発生の増大がみられた。

 以上の結果は、30日時点の評価においても、すべて確認された。

 著者は、「入院後48時間以内のPCI施行が予定されたNSTE心筋梗塞患者において、診断時にプラスグレルを投与する前治療は、30日間の重大虚血性イベントを減少せず、重大出血合併症を増大した。結果は、PCIを実際に施行された患者における解析でも一致がみられ、プラスグレルの治療戦略は冠動脈解剖学的所見の分析後に行うことを支持するものである」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)