末梢動脈疾患、21世紀の世界的な重要課題に/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2013/08/09

 

 末梢動脈疾患(PAD)の世界的な有病率は21世紀初頭の10年ほどで20%以上増加し、2010年の患者数は2億人以上に及ぶことが、英国・エジンバラ大学のF Gerald R Fowkes氏らの調査で示された。喫煙が最大のリスク因子であることもわかった。世界的な人口の高齢化や、低~中所得国における慢性疾患のリスク因子の広がりにより、今後10年間で非伝染性疾患の疾病負担の急激な上昇が予測されている。なかでも下肢のPADは、アテローム性動脈硬化症に起因する心血管疾患として、冠動脈疾患、脳卒中に次いで3番目に多く、その世界的な罹患状況の把握が急がれていた。Lancet誌オンライン版2013年8月1日号掲載の報告。

リスク因子と罹患状況をメタ解析などで推定
 研究グループは、PADの主要なリスク因子を同定し、世界的な罹患状況を推定するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を含む種々の分析を行った。
 1997年以降に行われたPAD(足関節上腕血圧比[ABI]≦0.90)に関する地域住民ベースの試験を対象とした。年齢別、性別の疫学モデルを用いて高所得国(HIC)、低~中所得国(LMIC)および世界的なPAD有病率を推算した。

 15の推定リスク因子のオッズ比(OR)に関するメタ解析を行って、HIC、LMICにおける効果量を算出した。次いで、これらのリスク因子を用いて世界保健機関(WHO)の規定による8地域(HIC 3地域、LMIC 5地域)のPAD患者数を予測した。

10年間の増加率は低~中所得国で高い傾向に
 34試験(日本を含むHICの22試験、LMICの12試験)に参加した11万2,027人(PAD 9,347例を含む)が解析の対象となった。男女ともに、加齢に伴ってPAD有病率が上昇した。

 たとえば、HICの45~49歳の有病率は女性が5.28%、男性が5.41%であり、85~89歳では女性が18.38%、男性は18.83%であった。男性の有病率はHICよりもLMICで低い傾向が認められ、45~49歳ではそれぞれ5.41%、2.89%、85~89歳では18.83%、14.94%だった。また、LMICでは男性よりも女性で高く、とくに若年層でその傾向が強かった(45~49歳の女性6.31%、男性2.89%、85~89歳はそれぞれ15.22%、14.94%)。

 リスク因子としては、喫煙の影響が最も大きく、現喫煙者のメタORはHICが2.72、LMICが1.42であった。次いで、糖尿病(メタOR:HIC 1.88、LMIC 1.47)、高血圧(同:1.55、1.36)、高コレステロール血症(同:1.19、1.14)の順であった。

 2010年の世界のPAD患者数は約2億200万人で、その3分の2以上(69.7%)がLMICの患者と推定された。東南アジアが5,480万人、西太平洋地域が4,590万人であった。2000~2010年の間にPAD患者は23.5%増加しており、HICの13.1%に対しLMICは28.7%と大きな差が認められた。

 著者は、「PADは21世紀の世界的な課題となっている。低~中所得国の政府、非政府組織(NGO)、民間組織は、その社会的、経済的な影響に対処し、至適な治療法や予防法に関する最善の戦略を立てる必要がある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)