dupilumab、好酸球数増多を伴う喘息患者の増悪を抑制/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2013/06/03

 

 新たな抗体医薬dupilumabは、吸入ステロイド薬+長時間作用型β2刺激薬(LABA)でコントロール不十分な好酸球増多を伴う中等症~重症の持続型喘息患者の治療において、これらの併用薬を中止後もプラセボに比べ増悪を高度に抑制することが、米国・ピッツバーグ大学のSally Wenzel氏らの検討で示された。dupilumabはインターロイキン(IL)-4受容体のαサブユニットに対する完全ヒトモノクローナル抗体で、2型ヘルパーT(Th2)細胞経路の主要なサイトカインであるIL-4およびIL-13双方のシグナル伝達を遮断することから、Th2細胞経路関連疾患の治療薬としての評価が進められている。本報告は第109回米国胸部学会(ATS、5月17~22日、フィラデルフィア)で発表され、NEJM誌オンライン版2013年5月21日号に掲載された。

増悪抑制効果をプラセボ対照無作為化第IIA相試験で評価
 研究グループは、好酸球増多を伴う中等症~重症の持続型喘息患者に対するdupilumabの有効性および安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第IIa相試験を実施した。

 対象は、18~65歳、中~高用量の吸入ステロイド薬(フルチカゾン)+LABA(サルメテロール)でコントロールが不十分な、血中好酸球数≧300/μLまたは喀痰中好酸球濃度≧3%の中等症~重症の持続型喘息患者。これらの患者が、dupilumab群(300mg)またはプラセボを週1回皮下投与する群に無作為に割り付けられ、12週の治療が行われた。

 割り付けから4週後にLABAを中止、6週後から3週をかけて吸入ステロイド薬を漸減して9週目に中止し、以降はdupilumabのみを12週目まで投与した。

 主要評価項目は喘息の増悪、副次的評価項目は喘息コントロールの指標とし、Th2細胞関連バイオマーカーや安全性についても検討を行った

増悪を87%抑制、FEV1、起床時PEF、ACQ5スコアも改善
 2011年3月~2012年10月までに米国の28施設から104例が登録され、dupilumab群に52例(平均年齢37.8歳、男性50%、喘息罹患期間24.2年、過去2年間の平均喘息増悪回数1.4回、血中好酸球数0.55×10-9/L)、プラセボ群にも52例[41.6歳、50%、26.9年、1.4回、0.47×10-9/L(p=0.04)]が割り付けられた。

 喘息増悪の発症率はdupilumab群が6%(3/52例)と、プラセボ群の44%(23/52例)に比べ有意に低下した(オッズ比[OR]:0.08、95%信頼区間[CI]:0.02~0.28、p<0.001)。これは、dupilumabにより増悪のリスクが87%抑制されたことを意味するという。増悪による入院例は両群ともにみられなかった。

 増悪までの期間はdupilumab群がプラセボ群に比べ延長し、Kaplan-Meier解析による12週時の増悪率はdupilumab群が有意に良好だった(0.06 vs 0.46、OR:0.10、95%CI:0.03~0.34、p<0.001)。すべての副次的評価項目がdupilumab群で良好で、ベースラインから12週までの1秒量(FEV1)の変化(p<0.001)のほか、起床時最大呼気流量(PEF)(p=0.005)、5項目からなる喘息コントロール質問票(ACQ5)スコア(p=0.001)などには有意差が認められた。

 12週後の呼気中一酸化窒素濃度(FENO)、TARC(Thymus and Activation-Regulated Chemokine)、eotaxin-3(CCL26)、IgEは、いずれもdupilumab群がプラセボ群よりも有意に低下した(すべてp<0.001)。YKL-40、がん胎児性抗原(CEA)には有意差はみられなかった。

 治療関連有害事象の発現率はdupilumab群が81%、プラセボ群は77%であった。このうち重篤な有害事象はそれぞれ2%、6%、有害事象による治療中止は6%、6%だった。dupilumab群で多い有害事象として、注射部位反応(29 vs 10%)、鼻咽頭炎(13 vs 4%)、悪心(8 vs 2%)、頭痛(12 vs 6%)などが確認された。

 著者は、「吸入ステロイド薬+LABA投与中の好酸球数増多を伴う中等症~重症の持続型喘息患者の治療において、dupilumabはこれらの併用薬を中止後もプラセボに比べ増悪を高度に抑制し、Th2細胞関連炎症マーカーを低下させた」と結論している。

(菅野守:医学ライター)