皆保険制度、実現にはサービスへのアクセスが課題

提供元:ケアネット

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公開日:2012/07/26

 

医療皆保険制度の実現には、医療サービスへのアクセスにおける物理的、財政的な障壁の解消が重要なことが、ロンドン大学公衆衛生学熱帯医学大学院のAnne Mills氏らがアフリカで行った調査で明らかとなった。医療皆保険制度は世界的に大きな関心事であり、とくに非正規労働者の保護に向けた医療財政制度に関する議論が続いている。最重要課題は、個々の財政制度やサービスの利用パターンの平等性だという。Lancet誌2012年7月14日号(オンライン版2012年5月15日号)掲載の報告。

医療財政とサービス利用の平等性を全システム分析で検討
研究グループは、ガーナ、南アフリカ、タンザニアにおける医療財政とサービス利用の平等性を全システム分析(公的領域と私的領域の統合解析)により検討した。

医療財政制度、高額医療支出、医療利益配分の進展性(progressivity)を算定し、量的な解析結果を解釈するための質的データを収集した。質的データにつき、地理的利用可能性(availability)、経済的利用可能性(affordability)、受容可能性(acceptability)に関する主題分析を行った。

平等性の解析により、適正な財政制度実現の指針が得られる
3国とも、医療財政は直接税により全般的に進展していた。間接税の医療費への配分は南アフリカでは減少していたが、ガーナとタンザニアでは増加していた。自己負担分は3国とも減少していた。正規領域以外からの医療保険負担はガーナとタンザニアでは減少していた。

3国とも全体的な医療利益配分は富裕層で多く、疾病負担は低所得層で大きかった。皆保険制度の実現に向けた最大の課題は、3国とも、必要とされる適切な医療サービスへのアクセスだった。

著者は、「医療財政やサービス利用の平等性を解析することで、財政制度の拡大や、医療保険未加入の非正規労働者の健康を考慮した適正な財政制度に関する問題提起の指針がもたらされる」とし、「皆保険制度を現実のものとするには、医療サービスへのアクセスに対する物理的、財政的な障壁の解消に取り組む必要がある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)