多疾患罹患、もはや例外ではない

提供元:ケアネット

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公開日:2012/07/19

 



患者の約4分の1が多疾患に罹患しており、その頻度は加齢とともに上昇し、とくに貧困地区では発症時期が10年以上早く、精神疾患の併発頻度が高いことが、英国Dundee大学のKaren Barnett氏らの調査で明らかとなった。長期間にわたる疾患の管理は医療が直面する重要な課題だが、医療システムは複数の疾患の併存状態よりも個々の単一疾患を想定して構成されている。これまでに行われた多疾患罹患の調査は、疾患数が少なく、患者の自己申告に基づくものや高齢者、入院患者を対象としたものが多いという。Lancet誌2012年7月7日号(オンライン版2012年5月10日号)掲載の報告。

多疾患罹患の発現状況を横断的研究で調査




研究グループは、多疾患罹患、および身体疾患と精神疾患の併存状況を、年齢や社会経済的状態との関連において調査する横断的研究を実施した。

2007年3月の時点で、スコットランドの314の診療所から登録されたデータベース(175万1,841件)を用い、40疾患のデータを抽出した。疾患数、疾患のタイプ(身体疾患、精神疾患)、性別、年齢、社会経済的状態について解析した。多疾患罹患は、2つ以上の慢性疾患の発現と定義した。
多疾患罹患率23.2%、精神疾患併存率8.34%




1つ以上の疾患の罹患率は42.2%、多疾患罹患率は23.2%で、身体疾患と精神疾患の併存率は8.34%だった。多疾患罹患率は加齢とともに上昇し、65歳以上の年齢層で最も高かったが、多疾患罹患の絶対数は65歳未満の年齢層のほうが多かった(21万500 vs 19万4,996)。

最富裕地区に比べ最貧困地区の住人のほうが、多疾患罹患の発現が10~15年早く、社会経済的貧困は精神疾患を含む多疾患罹患と関連を認めた(身体疾患と精神疾患の併存率:最貧困地区11.0% vs 最富裕地区5.9%)。

併存する身体疾患の数が増えるに従って精神疾患の発現が増加した(身体疾患が1つの場合の調整オッズ比1.95に対し、身体疾患が5つ以上併存する場合の調整オッズ比6.74)。精神疾患は富裕地区よりも貧困地区で多かった(調整オッズ比:2.28 vs 1.08)。

著者は、「多疾患罹患は例外ではなく、もはや標準である」と結論し、「これらの知見は、単一疾患に焦点を当てた現在の医学研究、教育、治療の体制に対する挑戦である。特に社会経済的貧困地区において、プライマリ・ケア医が多疾患罹患者に対し個別に包括的な治療を提供できるよう支援する戦略の確立が必要である」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)