高齢者は聴力低下の自覚に乏しい、スクリーニングには“ささやき検査”が有効

提供元:ケアネット

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公開日:2012/04/03

 



高齢者の聴力スクリーニングでは、単一の質問ではなく10項目からなる質問票のほうが、また2フィート先からささやいた文字や数などを答える「ささやき検査」が有効であるとの報告が、JAMA誌2012年3月21日号で発表された。米国・ミネソタ大学のJames T. Pacala氏らが、高齢者の聴覚障害について行われた1,700超の研究結果を再調査し明らかにした。高齢者の聴力の低下は、自覚がないまま進行することも少なくないという。米国の2005~2006年のNational Health and Nutrition Examination Surveyによると、70歳以上のうち、聴力低下が認められる人の割合は63%で、そのなかでも中程度から重度の聴覚障害は27%に上ることがわかっている。

10項目の聴覚障害調査票によるスクリーニング、単一質問より有効




研究グループは、1980~2011年12月1日までに発表された、高齢者の聴力喪失に関する研究結果について、PubMedを用いて再調査を行った。抽出した1,742件の研究結果のうち、エビデンスの程度が、A(質が高い)、B(中程度の質)以上のものについてのみ、分析を行った。

医師による聴力喪失に関する診察時のスクリーニングの種類とその検査能について、以下のような結果が得られた。

問診時の質問で、「聞こえにくいことがありますか?」「聞く力が弱くなってきたと思いますか?」という質問による、聴力喪失に関する陽性尤度比は2.4~4.2、陰性尤度比は0.33~0.55だった。さらに、10項目の質問からなる、「聴覚障害調査票、高齢者スクリーニング版」(Hearing Handicap Inventory for the Elderly-Screening Version)で、8ポイント超の場合、陽性尤度比は2.4~7.9、陰性尤度比は0.25~0.70と、先の質問よりも検査能は高かった。

2フィート先からのささやき検査、特に除外診断に有効




聴力障害のスクリーニングとして、なかでも検査能が高かったのは、2フィート先からの「ささやき検査」だった。6つの文字または数字のうち、3つ以上について聞き取れなかった場合を失格とし、陽性尤度比は7.4、陰性尤度比は0.007と、特に聴力障害の可能性を除外するのに有効だった。

一方、オーディオスコープを用いた聴力検査は、ささやき試験よりも検査能は劣り、陽性尤度比は3.1~5.8、陰性尤度比は0.03~0.40だった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)