医学ジャーナルのプレスリリースは、新聞報道に影響するか?

提供元:ケアネット

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公開日:2012/03/02

 



医学ジャーナルが特定の論文について発表したプレスリリースの質が高い場合は、それを報じる新聞記事の質も高くなるが、プレスリリースの質が低ければ関連新聞記事の質も低下することが、米在郷軍人局医療センターのLisa M Schwartz氏らの調査で明らかとなった。医学ジャーナルが発行するプレスリリースには質のばらつきがみられ、重要な要素が除外されたり、試験の重大な限界を伝えていないことが多いという。これらのプレスリリースが、新聞報道の質に及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。

プレスリリースが新聞記事の質に及ぼす影響を後ろ向きに評価




研究グループは、医学ジャーナルによるプレスリリースの質が、新聞の関連記事の質に及ぼす影響を評価するために、レトロスペクティブなコホート試験を実施した。

医学ジャーナル主要5誌(Annals of Internal Medicine、BMJ、Journal of the National Cancer Institute、JAMA、New England Journal of Medicine)を2009年1月号から順に古い号へとレビューし、アウトカムの定量化が可能で、新聞で報道(100語以上の独自記事)された最新の原著論文100編を抽出した。オンラインデータベース(Lexis Nexis、Factiva)を検索して759本の新聞記事を同定し、Eurekalertと当該ジャーナルのウェブサイトを検索して68本のプレスリリースを抽出した。

2名の研究者が別個に、論文、プレスリリース、関連新聞記事のサンプル(343本)の質の評価を行った。
プレスリリース発表論文の新聞掲載率は71%




1編の論文に関する新聞記事数の中央値は3本(1~72)であった。解析の対象となった新聞記事343本のうち、71%は医学ジャーナルがプレスリリースを発表した論文に関するものだった。

絶対リスクを明示した主要結果を掲載した記事は、プレスリリースにその情報がない場合は9%、それがある場合は53%で(相対リスク:6.0、95%信頼区間:2.3~15.4)、プレスリリースそのものがない場合は20%であった(同:2.2、0.83~6.1)。

記事の39%(133本)は有益な介入に関する研究を報じるものだった。プレスリリースが有害性に触れていない場合でもそれを報じた記事は24%で、プレスリリースが触れている場合は68%が有害性を報じており(相対リスク:2.8、95%信頼区間:1.1~7.4)、プレスリリースがない場合は36%であった(同:1.5、0.49~4.4)。

研究に重大な限界がある場合にそれを報じた記事は75%(256本)であった。プレスリリースがそれに触れていなくても限界について報じた記事は16%、プレスリリースが触れていれば48%が報じていて(相対リスク:3.0、95%信頼区間:1.5~6.2)、プレスリリースが発表されていなくても限界を記載したのは21%だった(同:1.3、0.50~3.6)。

これらの結果から、著者は「医学ジャーナルが発表した質の高いプレスリリースは関連新聞記事の質を高め、プレスリリースの質が低ければ新聞記事の質も低下すると考えられる」と結論している。

(菅野守:医学ライター)