成人とは異なる小児の肺高血圧症の臨床的特徴が明らかに

提供元:ケアネット

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公開日:2012/02/23

 



小児の肺高血圧症では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)が多く、その半数以上を特発性(IPAH)や家族性(FPAH)が占めるなど、成人とは異なる臨床的特徴を示すことが、オランダ・フローニンゲン大学のRolf M F Berger氏らの検討で明らかとなった。肺血管抵抗増加をともなう肺高血圧症は、高い合併症罹患率や死亡率を示す重大な疾患だが、その臨床的特徴は十分には知られていない。成人と小児では病理生物学的、臨床的特徴が類似する部分もあるが、たとえばIPAHやFPAHは小児のほうが予後不良であり、成人に比べ治療法の開発も遅れているため、分けて考える必要があるという。Lancet誌2012年2月11日号(オンライン版2012年1月11日号)掲載の報告。

19ヵ国31施設が参加する国際的レジストリー研究




Tracking Outcomes and Practice in Pediatric Pulmonary Hypertension(TOPP)は、小児肺高血圧症の人口学的背景、治療、アウトカムに関する情報の提供を目的とする国際的な前向きレジストリー研究。

2008年1月31日の開始から2010年2月15日までに、19ヵ国31施設から肺高血圧症または肺血管抵抗増加と診断された18歳未満の患者が登録された。患者背景および疾患特性として、診断時と登録時の年齢、性別、人種、主症状、肺高血圧症分類、併存疾患、病歴、家族歴、血行力学的指標、WHO機能分類クラスなどが記録された。フォローアップの決定は、個々の患者の医療ケアの必要性に応じて主治医が行った。
88%がPAH、その57%がIPAHまたはFPAH、特定疾患によるものは先天性心疾患が多数




456例が登録され、362例(79%)が肺高血圧症と確定された。317例(88%)がPAHと診断され、そのうち182例(57%)が特発性(IPAH)または家族性(FPAH)で、他の特定の疾患に起因した135例(43%)のうち115例(85%)は先天性心疾患が原因であった。

42例(12%)は呼吸器疾患あるいは低酸素症に起因する肺高血圧症で、その多くに気管支肺異形成がみられた。慢性血栓塞栓性肺高血圧症あるいは他の原因による肺高血圧症は3例のみであった。染色体異常(主に21トリソミー)は47例(13%)で報告された。

診断時年齢中央値は7歳(IQR:3~12)、59%(268/456例)が女児であった。呼吸困難と疲労が最も頻度の高い症状だったが、IPAHまたはFPAHの31%(57/182例)と、手術を受けた先天性心疾患患者の18%(8/45例)に失神が認められた。手術を受けていない先天性短絡性心疾患患者では失神はみられなかった。

362例中230例(64%)は、重篤な肺高血圧症にもかかわらずWHO機能分類クラスI/IIであり、右心機能は一貫して保持されていた。

著者は、「TOPP研究によって、小児肺高血圧症に特有の重要な臨床的特徴が同定された。これは、成人の試験のデータを外挿するよりも、小児特有のデータの必要性に関心を促すものだ」と結論している。

(菅野守:医学ライター)