軽度~中等度パーキンソン病患者に太極拳が有益

提供元:ケアネット

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公開日:2012/02/22

 



軽度~中等度のパーキンソン病患者に対し太極拳トレーニングを行うと、平衡障害が軽減し、運動能力の向上および転倒の減少という付加的なベネフィットが得られることが報告された。米国・ウィラメット大学のFuzhong Li氏らが行った無作為化試験の結果による。パーキンソン病患者では平衡障害が著しく、運動能力の低下と転倒リスクの増加が知られる。医療提供者によって常に運動が推奨されてきたが、これまで効果が実証された運動プログラムはほとんどなかった。NEJM誌2012年2月9日号掲載報告より。

可動域と方向制御についてベースラインからの変化を比較




研究グループは、オーダーメードの太極拳プログラムが特発性パーキンソン病患者の姿勢制御能力を高めることができるかどうかを評価する無作為化対照試験を行った。

ホーエン・ヤールの重症度分類(1~5の範囲で、数値が大きいほど重篤であることを示す)で病期1~4の患者195例を、太極拳群、筋力トレーニング群、ストレッチ群の3つのプログラム群に無作為に割り付け、24週間にわたり、毎週2回60分の運動セッションが行われた。

主要評価項目は、安定性限界テスト結果(Limits-of-Stability Test、最大可動域と方向制御について、範囲:0~100%)のベースラインからの変化量とした。副次評価項目は、歩行(歩幅と速度)、筋力(膝の伸筋・屈筋)、FRT(Functional-Reach test)とTUG(Timed Up-and-Go)の評価スコア、パーキンソン病評価統一尺度における運動スコア、転倒回数などだった。
太極拳、最大可動域と方向制御はストレッチ、筋トレより優れる




結果、最大可動域と方向制御について、太極拳群が、筋力トレーニング群、ストレッチ群より一貫してよい成績が示された。ベースラインからの変化量の群間差は、最大可動域が、対筋力トレーニング群5.55ポイント(95%信頼区間:1.12~9.97)、対ストレッチ群11.98ポイント(同:7.21~16.74)、方向制御が、それぞれ10.45ポイント(同:3.89~17.00)、11.38ポイント(同:5.50~17.27)だった。

また太極拳群は、すべての副次評価項目について、ストレッチ群より成績がよかった。歩幅とFRTについては、筋力トレーニング群よりも成績が上回っていた。

転倒の発生率は、太極拳群は他の2群より低かった。その差はストレッチ群とは有意だったが、筋力トレーニング群とは有意差ではなかった。

太極拳訓練の効果は介入後3ヵ月間持続し、重篤な有害事象は観察されなかった。

(朝田哲明:医療ライター)