研究助成の決定、無作為性が十分ではなく申込者にコスト負荷

提供元:ケアネット

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公開日:2011/10/14

 



オーストラリアにおける保健・医療研究の助成金決定作業における無作為性と費用について検討した結果、無作為性は十分ではなく、申込者のコストがかさんでいる実態が報告された。オーストリア・クイーンズランド工科大学公衆衛生校&ヘルスバイオメディカル研究所のNicholas Graves氏らによる。研究助成に対する申し込みの成功率は世界的に低下しており、たとえば英国では2000年43%から2008年26%、オーストラリアでは2000年30%から2010年23%となっているという。Graves氏らは、本研究を行った目的について、申込不成功でキャリアへの打撃とさらなる参加コストを要することになる研究者に役立つ情報提供をすることだとしている。BMJ誌2011年10月1日号(オンライン版2011年9月27日号)掲載報告より。

2009年にオーストラリアNHMRCに申し込みがあった2,705件を後ろ向きに解析




研究は、オーストラリアのNational Health and Medical Research Council(NHMRC)の助成金事業に、2009年に申し込みのあった全2,983件のうち2,705件を対象に後ろ向きに解析した。NHMRC助成金委員会委員のスコアについても評価した。

主要評価項目は、資金獲得について「常に」「時々」「一度もない」それぞれの助成申込研究の割合だった。評価は、各委員のスコアに起因する無作為変化を加味してから行われた。また、委員会規模(7名、9名、11名)の違いによる費用対効果についても評価が行われた。

助成金獲得「一度もない」61%、「時々」29%




解析対象だった2,705件の助成申込研究のうち、620件が助成金対象として選定された。そのうち資金獲得が「時々」だったのは、無作為変化を考慮後で、59%だった。

全体(2,705件)をみたところ、資金獲得が「常に」だったのは9%(255件)だけで、「一度もない」は61%(1,662件)、「時々」は29%(788件)だった。

研究者の大半は助成申請準備に、中央値22日間を要していた。先導研究者の2人は申し込みに65日以上を費やしていた。主任研究者の5人が費やしたのは15日未満だった。

資金獲得運動の費用は総額4,787万豪ドルで、85%は申込者の負担となっていた。

委員会規模が大きいほうがシステムは良好であった。最も効果的なシステムで資金提供するためにかかる追加コストは、1万8,541豪ドルであった。