複数の微量栄養素補給を受けた妊婦の子は早期死亡率が低い

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2008/01/31

 

開発途上国における妊婦の栄養補給は一般に鉄および葉酸に限られている。胎児および新生児の死亡を防ぐには複数の微量栄養素を補給するほうが有効と考えられるが、エビデンスがほとんどないため普及していない。Supplementation with Multiple Micronutrients Intervention Trial (SUMMIT)の研究グループは、通常の妊婦管理サービスにおいては、鉄+葉酸に比べ複数の微量栄養素を補給するほうが新生児の死亡率を低下させることを明らかにした。Lancet誌2008年1月19日号掲載の報告。

鉄+葉酸補給と複数微量栄養素補給を比較するクラスター無作為化試験




SUMMITは、通常の妊婦管理サービスにおける鉄+葉酸補給と複数の微量栄養素補給の胎児および新生児死亡に及ぼす影響を比較するために、インドネシアのロンボク島で実施された二重盲検クラスター無作為化試験。

2001年7月~2004年4月の間に、262人のトレーニングを受けた助産婦による妊婦管理サービスに31,290人の妊婦が登録され、鉄+葉酸群に15,486人が、複数微量栄養素群に15,804人が無作為に割り付けられた。妊婦は登録時から産後90日まで毎日栄養補給を受けた。

早期死亡率が18%低下、とくに栄養不良および貧血の妊婦に有効




主要評価項目である早期死亡率(生後90日以内の死亡)は、1,000人の新生児当たり複数微量栄養素群が35.5人、鉄+葉酸群は43人であり、前者で有意に18%低下した(相対リスク0.82、p=0.010)。登録時に栄養不良(上腕中央部周囲<23.5cm)がみられた妊婦の子の早期死亡率は複数微量栄養素群で25%低下しており(同0.75、p=0.0021)、貧血(ヘモグロビン<110g/L)のみられた妊婦の子では38%低下していた(同0.62、p<0.0001)。

胎児と新生児の複合死亡率は複数微量栄養素群が鉄+葉酸群よりも11%低下しており(同0.89、p=0.045)、栄養不良妊婦の子では15%低下し(同0.85、p=0.022)、貧血妊婦の子では29%低下していた(同0.71、p=0.0010)。出生後1時間以内に体重が測定された11,101人の新生児のうち、複数微量栄養素群では低出生体重のリスクが鉄+葉酸群よりも14%低下し(同0.86、p=0.060)、貧血妊婦の子では33%低下していた(同0.67、p=0.0062)。

これらの知見により、研究グループは「妊婦に対する複数の微量栄養素補給は、鉄+葉酸補給に比べ新生児の早期死亡率を低下させ、その効果はとくに栄養不良妊婦や貧血妊婦の子において大きい」と結論し、「妊婦管理プログラム全体の強化のなかでも、複数微量栄養素補給の役割は重要性が高い可能性がある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)