救急外来受診後の非入院帰宅者、待ち時間が長いほど有害イベントリスクが上昇

提供元:ケアネット

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公開日:2011/06/17

 



救急外来を受診後に入院せずに帰宅した患者では、待ち時間が長いほどその後の短期的な有害イベントの発生リスクが上昇することが、カナダ・トロント大学のAstrid Guttmann氏らの調査で明らかとなった。詳細は、BMJ誌2011年6月4日号(オンライン版2011年6月1日号)に掲載された。医師に面会せずに帰宅しても、診察を受けた場合と比較してリスクに変化はなかったという。先進諸国では、救急外来の長い待ち時間が広範な問題を引き起こしており、治療の遅れはもとより、時間的制約のある治療や入院を要する病態のよくない患者における不良な予後の原因にもなることが知られている。また、多くの患者が診察後に入院せず帰宅しており、最大で約10%の患者が医師にも会わずに病院を去るという。

救急外来受診後非入院帰宅者の有害イベントリスクを評価する後ろ向きコホート試験




研究グループは、待機時間が長い時間帯に救急外来を受診し、長い待ち時間を過ごしたのちに入院せずに帰宅した患者における有害イベントの発生リスクについて検討するために、地域住民ベースのレトロスペクティブなコホート試験を実施した。

2003年4月~2008年3月までに、カナダ・オンタリオ州の高収容数の救急外来を受診後に入院せずに帰宅した患者(医師の診察を受けた後に帰宅、医師と面会せず診断、治療を受けずに帰宅)が解析の対象となった。

主要評価項目は、主な背景因子(患者、受診時間帯、施設)で調整後の有害事象リスク(7日以内の入院あるいは死亡)とした。

重症例の短期的な死亡リスクが79%上昇、入院リスクも95%上昇




5年間で1,393万4,542人が救急外来で医師の診察を受けたのち入院せずに帰宅し、医師と面会せずに帰宅したのは61万7,011人であった。

7日以内に有害なイベントが発生するリスクは、救急外来での平均待ち時間が長くなるに従って上昇した。待ち時間が6時間以上の患者の1時間未満の患者に対する調整オッズ比は、重症例では死亡が1.79(95%信頼区間:1.24~2.59)、入院が1.95(同:1.79~2.13)であり、軽症例では死亡が1.71(同:1.25~2.35)、入院が1.66(同:1.56~1.76)であった。

医師による診察の有無は、入院せずに帰宅した患者における有害イベントの発生リスクには影響しなかった。

著者は、「待機時間が長い時間帯に救急外来を受診することで、平均待ち時間が延長し、その結果として、帰宅に支障のないくらいには十分な体力のある患者において短期的な死亡や入院のリスクが増大していた。医師と面会せずに帰宅しても、短期的な有害イベントのリスクは上昇しなかった」と結論している。

(菅野守:医学ライター)