妊娠高血圧腎症の検出モデルの検出能は中等度

提供元:ケアネット

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公開日:2011/05/13

 



イギリス・キングス・カレッジ・ロンドンのRobyn A North氏らによって開発された臨床的リスク因子に基づく妊娠高血圧腎症の検出モデルの検出能は中等度であり、今後、さらなる検討が必要なことが、同氏が行った検証試験で示された。妊娠高血圧腎症は、妊娠20週以降に高血圧に蛋白尿を伴って発症し、母体のみならず胎児にも重大な影響を及ぼす多臓器合併症であり、炎症性反応および血管内皮機能障害による子宮胎盤循環障害で特徴づけられる。多くの臨床的なリスク因子が確認されているが、複合的なリスク因子を有する未経産婦における発症リスクはほとんど知られておらず、健康な未経産婦のリスクを正確に評価する方法は確立されていないという。BMJ誌2011年4月23日号(オンライン版2011年4月7日号)掲載の報告。

検出モデルの開発、高リスク例の同定を目的とするコホート試験




研究グループは、未経産婦を対象に、臨床的リスク因子に基づく妊娠高血圧腎症の検出モデルを開発し、専門医への紹介の必要性が示唆される高リスクのサブグループを同定するためのプロスペクティブな多施設共同コホート試験を実施した。

2004年11月~2008年8月までに、4ヵ国(ニュージーランド、オーストラリア、イギリス、アイルランド)の5施設から単胎妊娠の健康な未経産婦3,572人が登録され、このうち3,529人(99%)から妊娠の転帰に関するデータを入手した。

妊娠高血圧腎症は、妊娠20週以降から陣痛発現前まで、あるいは産後に、2回以上の測定(各測定の間隔を4時間以上開ける)で収縮期血圧≧140mmHg、拡張期血圧≧90mmHgのいずれか一方、あるいは両方を満たし、蛋白尿(24時間尿:尿中蛋白≧300mg/日、随時尿:蛋白/クレアチニン比≧30mg/mmolクレアチニン、試験紙法≧2+)あるいは多臓器合併症を伴う場合と定義した。妊娠期間37週未満で出産した場合は、早産性妊娠高血圧腎症とした。

9%が専門医への紹介を要し、そのうち21%が妊娠高血圧腎症を発症すると予測




妊娠高血圧腎症の発生率は5.3%(186/3,529人)、早産をきたした妊娠高血圧腎症は1.3%(47/3,529人)であった。

妊娠期間14~16週における臨床的リスク因子として、年齢、平均動脈血圧、BMI、妊娠高血圧腎症の家族歴、冠動脈心疾患の家族歴、出産時の妊婦体重、5日以上持続する性器出血が検出された。リスクを軽減する因子としては、妊娠10週以内の流産(1回、同一パートナー)の既往、妊娠に要した期間≧12ヵ月、頻回の果物摂取(≧3回/日)、喫煙、妊娠1~3ヵ月における飲酒が確認された。

受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)は0.71であった。子宮動脈のドップラー検査の指標を追加しても、検出能は改善されなかった(AUC:0.71)。

単一のリスク因子を有する妊婦のサブグループにおける子宮動脈ドップラー検査の異常値のモデルで予測された妊娠高血圧腎症の可能性に基づいて、専門医紹介のフレームワークを構築した。その結果、未経産婦の9%が専門医への紹介を要し、そのうち21%が妊娠高血圧腎症を発症すると考えられた。標準治療との比較における専門医へ紹介した場合の疾患発症の相対リスクは、妊娠高血圧腎症が5.5、早産性妊娠高血圧腎症は12.2であった。

著者は、「健康な未経産婦における臨床的表現型を用いたモデルによる妊娠高血圧腎症の検出能は中等度であり、今後、別の集団における検証が求められる」と結論し、「このモデルの妥当性が確認された場合は、さらにバイオマーカーを加えて個別化された臨床的リスク・プロフィールが得られる可能性がある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)